「次の審査、受けてみる?」と声をかけられても、申込書はどこでもらうのか、当日は何を持っていけばいいのか、意外と誰も一から説明してくれません。周りは慣れている人ばかりなので、聞くタイミングも逃しがちです。
わたしは大人になってから弓道を始めて、まだ段位を持っていません。審査の手続きを調べてみると、申し込みは所属している支部や学校を通すのが基本で、当日の決まりごとも規程でかなり細かく決まっていました。
先に流れをまとめると、申し込みは所属の支部・学校を通して締切までに出し、当日は5人ずつ並んで2本の矢を射て、学科と合わせて合否が決まります。都道府県の審査会なら、結果はその日のうちに発表されます。
この記事は、全日本弓道連盟(以下、全弓連)の審査規程と、各県の弓道連盟が出している審査の実施要項をもとに整理しました。
- 弓道の審査会の種類(地方・連合・中央)と、何を見られるか
- 申込書の書き方と、締切・審査料の払い方
- 審査当日の流れ(受付から行射、結果発表まで)
- 持ち物チェック表と服装の決まり
- 合格したあとの手続きと、不合格だったときのこと
弓道の審査とは|誰が・どこで・年に何回
弓道の審査は、級位・段位・称号を認めてもらうための場です。主催はすべて全弓連で、実際の運営は都道府県の弓道連盟などが担当します。どこで受けても、合格すれば同じ全弓連の段位です。
審査会は、受けられる段位によって3つに分かれています。
| 審査会 | 受けられる段位 | 開かれ方 |
|---|---|---|
| 地方審査 | 級位〜四段 | 都道府県の連盟が年2回以上(年4回以上の県もある) |
| 連合審査 | 五段以下(主に五段) | いくつかの県がまとまって開く |
| 中央審査 | 六段以上と錬士・教士 | 全弓連が京都・仙台・福岡・東京・名古屋などで開く |
はじめての人が受けるのは、地元の県で開かれる地方審査です。最初は「無指定」という区分で申し込み、その日の結果で級位か初段かが決まります。段位の全体像や、次の段を受けられるまでの期間は弓道の段位一覧にまとめました。
何を見られる?審査の基準
行射(実際に矢を射るところ)は、数人の審査員がそれぞれ合否の票を入れる形で判定されます。四段以下なら、審査員の票の5割以上を取り、さらに学科で60点以上を取ると合格です。級位は行射だけで決まり、無指定で初段に認められるには学科の合格が必要になります。
見られるのは的に当たったかどうかだけではありません。射場に入ってから出るまでの動き(体配)、射の形、落ち着きまで含めて全体で判断されます。段ごとに求められる水準は段位一覧の記事に、初段で見られることの細かいところは弓道初段の合格基準と審査内容|体配・間合い・射型のポイントにまとめています。
申込から合格までの流れ
審査は、当日だけで終わるものではありません。申し込みから証書が届くまでを通して見ると、だいたい次の順番になります。
- 連盟から年間の日程と実施要項が出る
- 所属の支部・学校を通して申込書と審査料を出す(締切は審査日の3週間〜2か月ほど前)
- 学科の答案を用意する(申し込みと一緒に出す形がほとんど)
- 審査の少し前に、受付時刻や立ち順が知らされる
- 審査当日:受付 → 行射 → その日のうちに結果発表
- 合格したら登録料を納める → 後日、証書が届く

締切が思ったより早いので、「受けてみようかな」と思ったら、まず先生か支部の担当の人に次の審査の日程を聞いておくのが確実です。今の段を取ってから次を受けられるまでの期間(五段以下は5か月)も決まっているので、あわせて確かめておきます。
審査の申し込み方|申込書の書き方と締切
申し込みは所属の支部・学校を通す
審査の申し込みは、個人が全弓連に直接出すものではありません。規程では、申込書に審査料を添えて都道府県連盟の会長に出すことになっていて、実際には支部や学校がまとめて連盟に送ります。
なので、教室や弓道会に通っている人は先生か担当の人に、高校生は顧問の先生に「次の審査を受けたい」と伝えるところから始まります。連盟の会員登録(全弓連の会員ID)が必要なので、まだの人は早めに手続きしておきます。
申込書は全弓連の様式。書くときの注意
五段以下の申込書は、全弓連が決めた様式(級位・五段以下用)を使います。全弓連の資料ページや県連のサイトからダウンロードでき、支部で配ってくれることもあります。書くときに気をつけたいのは、次のあたりです。
- 氏名は2か所とも自筆で書く(それ以外はパソコン入力を認めている連盟が多い)
- 手書きの部分は楷書で、黒のボールペンなどを使う(鉛筆は不可)
- 年月日は和暦(令和◯年)で書く
- 全弓連の会員IDを書く欄がある
- 印刷するときは縮小しない(実寸で印刷するよう求める連盟もある)
ひざや足首が悪くて正座からの動作が難しい人は、申込書の連絡欄に「立射で受けたい」ことと理由を書いて申し出ます。審査は坐射(すわった姿勢から立って射る形)が原則なので、立射にするには連盟の承諾が要ります。
締切と審査料の払い方
締切は連盟によって違い、調べた範囲では審査日の3週間前から2か月ほど前まで幅がありました。支部でとりまとめる分、支部の締切はさらに前になります。締切を過ぎた申し込みは、原則として受け付けてもらえません。
審査料は申し込みと一緒に納めます。納めた審査料は、原則として返ってきません。早めに連絡すれば返金に応じる連盟もあるので、受けられなくなったらすぐ支部に伝えてください。金額は段ごとに決まっていて、弓道にかかる費用に表でまとめています。
学科の答案は、出し方が連盟で違う
学科(筆記)の問題は、全弓連が年度ごとに作って前もって公表しています。無指定・初段なら、射法や体配についての問題と、弓道の考え方についての問題に答える形です。
答案をいつ出すかは連盟によって違います。調べた範囲では、申込書と一緒にレポートとして出す形がほとんどでした。答案用紙の指定や手書きかどうかも連盟ごとに決まっているので、要項の「学科」の欄で確認してください。答案の組み立て方は弓道審査の筆記(学科)の書き方|問題例と答案の組み立て方で整理します。
射法や体配の問題は、全弓連の『弓道教本 第一巻』に書かれている内容そのものが問われます。答案を書くときにいちばん頼りになるのはこの一冊です。
審査当日の流れ|受付から行射・発表まで
当日の進め方は会場ごとに決まっていて、細かい時刻や順番は要項や進行表で知らされます。おおまかには、こんな流れです。
| 順番 | やること | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 1 | 受付 | 受付時刻(区分ごとに違うことがある) |
| 2 | 着替え・弓の準備 | 弦の張り具合、矢の本数 |
| 3 | 立ち順の確認・待機 | 自分の立ちと、何番目に入るか |
| 4 | 呼び出し → 入場・行射 → 退場 | 同じ立ちの人との動きの合わせ方 |
| 5 | 結果発表 | 発表の場所と時刻 |
| 6 | 合格したら登録料を納める | 当日現金か、後日振込か |
受付と立ち順。遅刻すると受けられない
受付時刻や立ち順は、審査日の少し前に支部や学校を通して知らされることが多いようです。受審者が多い会場では、区分ごとに受付の時間帯を分けているところもあります。
ここで気をつけたいのが遅刻です。規程では、受付時間に遅れたり、呼び出しに応じなかったりすると棄権とみなされ、審査料も返ってきません。会場の場所と、着替えにかかる時間は前もって見ておきたいところです。
受付を済ませたら、同じ立ちになる人と顔を合わせて、入場の順番や動作の合わせ方を軽く確かめておくと落ち着けます。
行射は5人立ちで2本。入場から退場まで見られている
行射は5人が一列に並ぶ「5人立ち」で、近的(28m先の的)を使い、一人2本の矢(甲矢と乙矢)を射ます。すわった姿勢から立って射る坐射が原則です。四段までは弓道着で、五段からは和服を着て、男性は肌脱ぎ、女性は襷さばきをしてから射ます。
審査員が見ているのは、矢を放つ瞬間だけではありません。射場に入るときの礼、歩き方、座り方、前の人との間合いまで含めて「体配」として見られます。入退場の動作の順番は弓道の体配とは|入場から退場までの流れと座射・立射にまとめています。
射る前の所作まで審査に入っていると知ったとき、わたしはわりとすんなり納得しました。以前通っていた抜刀の教室でも、礼法や立ち居振る舞いは付け足しではなく稽古の本体で、座る・歩く・道具を持つといった動きにこそ、師匠と初心者の差がはっきり出ていたからです。弓道でも同じなんだろうと思います。
結果はその日のうちに発表される
都道府県の地方審査と連合審査は、規程で即日発表と決まっています。発表のしかたは会場によって違います。観覧席で発表を待てる会場もあり、発表が終わったら速やかに退館するよう求められることもあります。
中央審査では、錬士と六段はその日に発表され、七段・八段と教士は、その日に候補者が発表されたあと論文を出して最終的に決まります。
審査の持ち物と服装
持ち物は、普段の稽古道具に「書類」と「お金」と「予備」が加わるイメージです。前日に見ながら確認できるよう、表にしておきます。
| 区分 | 持ち物 | メモ |
|---|---|---|
| 必ず要る | 弓道着一式(上衣・袴・帯・白足袋) | 汚れやシワのないもの |
| 必ず要る | 弓・矢・ゆがけ(弽・かけ)・下がけ | 矢は2本以上。弦は張って点検しておく |
| 必ず要る | 連盟から指定された書類 | 受審票、当日提出の学科答案など(ある場合) |
| 必ず要る | 登録料(当日納める場合) | 現金。金額は要項で確認 |
| あると安心 | 替えの弦 | 当日に切れたときのため |
| あると安心 | 予備の足袋 | 移動中に汚れたときのため |
| あると安心 | 弁当・飲み物 | 会場のまわりに店がないことがある |
| あると安心 | かけ袋・小物入れ・タオル | ゆがけや貴重品をまとめて持ち歩ける |
弦を新しくするなら、当日ではなく1〜2週間ほど前に張って慣らしておくよう勧めている弓具店での記載もありました。張ったばかりの弦は落ち着くまで伸びるので、替えの弦も一度張っておいたものだと安心です。
服装の決まり
規程では、四段以下は原則として弓道着、五段以上と錬士・教士は和服で受けることになっています。足袋の汚れや袴のシワは意外と目立つので、当日は足袋のまま靴を履かないなど、会場に着くまでの扱いにも気をつけたいところです。更衣室が混むため、着装して来るよう呼びかけている連盟もあります。
教室ではジャージやTシャツで稽古している人も、審査までには弓道着を揃えておく必要があります。サイズで迷わないなら、一式まとまったセットが手軽です。
弓道着の初心者セット(上衣・袴・帯・足袋)
審査は四段まで弓道着で受けます。翠山弓具店のセットは男性用5点・女性用6点(胸当て付き)。教室や部活で色や購入先の指定がないか、先に確認してから選んでください。
弓・矢・ゆがけを借りている人は
教室の貸し出しの道具で審査を受けられるかは、教室や支部によって違うので、申し込む前に先生に聞いておきます。借りられる場合も、当日いきなり違う弓を持つより、ふだん稽古で使っている弓で受けられるよう相談しておくほうが安心です。自分の道具をそろえる順番は弓道の道具一覧、弓の選び方は弓道の弓の値段と種類にまとめています。
結果発表のあと|登録料・証書・不合格だったとき
合格したら登録料を納める
合格すると、審査料とは別に登録料を納めます。地方審査の場合、納める先はその県の連盟です。当日その場で現金で納める形と、後日振り込む形があるので、要項で確かめておきます。初段なら登録料は3,100円で、県の連盟によっては独自の協力金などが加わることもあります。金額の一覧は弓道にかかる費用にあります。
証書と、名前の公表
登録料を納めると、後日、全弓連の証書が届きます。証書の日付は、届いた日ではなく審査会の日です。合格者の名前は、全弓連が出している月刊誌『弓道』に載ります。県の連盟によっては、サイトに合格者の受審番号や名前をPDFで出しているところもあります。
不合格だったら
不合格でも、次の審査会でまた受けられます。そしてあまり知られていないのが、地方審査と連合審査では、不合格だった人が申請すれば、行射で何票入ったかと学科の点数を書面で問い合わせられるという仕組みです。申請できるのは審査の日を含めて7日以内で、学校の顧問や所属の団体を通して書面で出します。
中央審査には、審査が終わってから1週間以内に書面で異議を申し立てる制度もあります。
調べていていちばん意外だったのが、この開示の仕組みでした。落ちた理由を「たぶん的中が足りなかった」と想像で終わらせず、行射と学科のどちらが足りなかったのかを数字で確かめられる。次の稽古で何を直すかを決めるうえで、かなり心強い仕組みだと思います。
高校生・中学生の審査と、保護者が知っておきたいこと
高校生や中学生は、学校の顧問の先生がとりまとめて申し込むのが一般的です。申込書の「学校責任者」の欄に顧問の名前が入り、審査料も学校単位でまとめて振り込む連盟があります。県によっては、小中学生向けの審査会を一般とは別の日に開いていたり、生徒は弓道着がなければ体操服でもよいとしていたりします。
保護者の方が気にしておきたいのは、審査料と登録料をいつ・誰に払うかです。学校が集める場合が多いので、顧問の先生からの案内を待つのが確実です。付き添いで会場に行くときは、観覧席で結果を待てるかどうかも会場によって違います。部活全体にかかるお金は弓道にかかる費用の部活の節、部活そのものの話は弓道部とは|練習内容・1年の流れ・費用・向いている人にまとめています。
弓道の審査のよくある質問
Q. はじめての審査は、いつ受ければいいですか?
決まった目安はなく、先生から「次の審査を受けてみては」と声がかかったときが一つのタイミングです。教室や弓道会に通っている人は、まず先生に相談してみてください。段位を取ってから次を受けられるまでの期間は段位一覧にまとめています。
Q. 教室で借りている弓で審査を受けてもいいですか?
教室や支部によって扱いが違います。申し込む前に先生に確認しておくのが確実です。
Q. 学科は何を書くのですか?
全弓連が年度ごとに問題を公表していて、射法や体配についての問題と、弓道の考え方についての問題に記述で答えます。答案の書き方は弓道審査の筆記(学科)の書き方|問題例と答案の組み立て方で整理します。
Q. 審査の日に遅刻したらどうなりますか?
受付時間に遅れると棄権とみなされ、審査料も返ってきません。会場までの時間には余裕を持っておいてください。
Q. 審査の結果はネットで見られますか?
当日の会場で発表されるのが基本です。県の連盟によっては、サイトに合格者をPDFで載せているところもありますが、全国をまとめて見られる一覧はありません。
まとめ|申し込みは早めに、当日は時間に余裕を
弓道の審査は、所属の支部や学校を通して申し込み、当日は5人立ちで2本を射て、学科と合わせて判定されます。地方審査なら結果はその日のうちに分かり、合格したら登録料を納めて証書を受け取ります。
はじめての人がつまずきやすいのは、思ったより早い締切と、遅刻すると受けられないことの2つだと思います。受けると決めたら先生に日程を聞き、要項の締切・学科の出し方・登録料の払い方の3つだけは先に確かめておくと、当日は射ることに集中できます。
学科の答案づくりにも、体配の確認にも使えるのが『弓道教本 第一巻』です。手元に一冊あると、審査の準備がぐっと進めやすくなります。
