弓道の体配とは|入場から退場までの流れと座射・立射

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射法八節は覚えてきたのに、射場への入り方や座るタイミング、どこで礼をするのかがあいまいで、前の人の動きを見ながらついていっている。そんな人は多いのではないでしょうか。

座る、歩く、弓を持つ。射る前のこうした所作にこそ、日々の修養の差が出ると感じています。以前わたしが通っていた抜刀の教室でも、礼法と立ち居振る舞いはとても重要視されていました。

わたし自身はまだまだの身なので、この記事は公開されている資料を読み比べて、流れを整理したものです。道場や先生によってやり方が違うところもあるので、最後は習っている先生のご指導に従うのが確実です。知識や習ったことの整理に使っていただけたらうれしいです。

先に要点を書くと、体配(たいはい)は、射場に入ってから出るまでの、弓を射る前後の決められた動作です。坐射(座射とも書きます)の流れは、入場して礼(揖)→ 本座で跪坐して揖 → 射位へ進んで跪坐 → 立って射る → 退場。その土台になるのが、立つ・座る・歩く・回る・礼をするといった基本の動作です。

この記事は、全日本弓道連盟(全弓連)が公開している「審査における行射の要領」「弓道競技規則」「立射の作法」と、スポーツ庁が公開している弓道の動画、中学校向けの指導書をもとに整理しています。

この記事でわかること
  • 体配とは何か、審査でどう見られるか
  • 坐射の入場から退場までの流れと順番
  • 跪坐・歩き方・回り方・揖・執弓の姿勢など基本の動作
  • 坐射と立射の違い
  • 大前・落など立ち順の呼び方と、崩れやすいところ
目次

弓道の体配とは|射る前後の決められた動作

体配(たいはい)の読み方と範囲

体配は「たいはい」と読みます。射場での立ち居振る舞い(起居進退)の作法のことです。

中身は、射場への入退場、礼、射る前に控える「本座(ほんざ)」への着き方、矢を射る「射位(しゃい)」への進み方など。スポーツ庁の動画では、弓を射る前後の定められた動作と説明されています。

そして体配を支えるのが「基本体(きほんたい)」です。立ち方・坐り方・歩き方・回り方といった基本の姿勢と動作のことで、これができていないと体配もそろいません。この記事でも、流れと基本体を分けて書いていきます。

審査では、射と同じように見られる

段位の審査では、的に中ったかどうかだけでなく、射場に入ってから出るまでの体配も見られます。全弓連の審査統一基準では、初段の体配の項目に「基本の型に適った姿勢、動作」と「節度ある態度」が挙がっています。

段ごとに見られるポイントや、5人立ちで「いつ立って、いつ引くか」という間合いは、弓道初段の合格基準と審査内容にまとめています。

射法八節との関係

足踏みから残心までの射法八節は、弓を射る動作そのものです。体配はその前後と間をつなぐ動作、と考えると分かりやすいと思います。射位で立って足踏みをしたところから射法八節が始まり、弓倒しで執弓の姿勢に戻ったところから、また体配に戻ります。八節の中身は射法八節とはで整理しています。

こちらはスポーツ庁の動画です。体配を丁寧に行うことで、集中力を上げていくとも紹介されていますね。

スポーツ庁「日本の武道を学ぼう」【弓道】05 弓道 基本的な動作の概要

坐射(座射)の流れ|入場から退場までの順番

坐射(ざしゃ)とは、本座と射位で跪坐(きざ)し、射位で立ち上がって射る形です。

全弓連が公開している審査と競技の行射の要領(5人立ちの場合)をもとに、一人の動きとして並べると次のようになります。

坐射の入場から退場までの流れ。入場して上座に礼(揖)、本座で跪坐して揖、射位へ進んで跪坐し脇正面に向いて矢を番える、立って射る、1番から順に退場して揖
場面すること確かめておきたいこと
入場上座に意識を向けて礼をする。先頭(1番)は礼、2番以降は揖どちらの足から入るか、どこで礼をするか(道場の決まり)
本座本座に進んで跪坐し、立ちの全員でそろって揖をする揖の合図・タイミング(前立がいるときは最後の弦音など)
射位へ立って射位まで進み、跪坐する本座から射位までの歩数
射位跪坐のまま脇正面に向きを変え、弓を立てて矢を番えて待つ自分が何番目で、いつ立つか(間合い)
行射立って足踏みから射法八節。2本目(乙矢)も同じ位置で甲矢のあと、どの姿勢で待つか(審査と競技で違う)
退場射終わったら1番から順に退場し、上座に揖をする退場の向き・揖の場所
全弓連「審査における行射の要領」「弓道競技規則」の行射の要領をもとに整理(2026年10月時点)

入場と、上座への礼(揖)

射場に入るときと出るときは、上座に意識を向けて礼(揖)をします。全弓連の競技の要領では、入場口で1番(大前)は礼、2番以降は揖、退場口では揖。スポーツ庁の動画でも、入場のときに先頭の射手は礼、それ以外は揖と説明されています。

揖(ゆう)は、上体を10cmほど前に傾けるごく浅い礼のことです。弓道では礼よりもこちらを使う場面が多く、入退場・本座など何度も出てきます。

一方で、どちらの足から射場に入るか、どこで立ち止まって礼をするかは、道場の造りや先生の教え方で違うことがあります。ここは教わったやり方に合わせるのがいちばんです。

本座で跪坐して揖、射位へ進む

入場したら本座に進んで跪坐し、立ちの全員でそろって揖をしてから射位へ進みます。この本座での揖は、スポーツ庁の動画では「これから弓を引くという決意を表し、自分の心を整えるためのもの」と説明されています。

本座は射位の数歩手前の位置で、坐射なら射位の3歩ほど手前です。ただ、実際の道場では床の目印や先生の指示で位置を決めていることも多いようなので、まずは自分の道場の本座の位置を覚えておくと安心です。

射位で跪坐して矢を番え、立って射る

射位に着いたら跪坐し、脇正面に向きを変えて、弓を立てて矢を番えて待ちます。脇正面は、射位で体を向ける向きの基準になる方向です(審判員席の方向)。

自分の番が来たら、筈(はず)を持った右手を腰のあたりに保ち、腰を切るようにして立ち上がります。立ったら足踏みから射法八節に入ります。矢の番え方や持ち方には、流派の系統(礼射系・武射系)によって違いがあると説明されているので、ここも教わったやり方に合わせましょう。

5人立ちのとき、何番の人がいつ立ち、いつ引くかは決まっています。たとえば審査では、2番は1番の胴造りが終わるころに立ち、1番の弦音(つるね)で取懸けて行射、3番からは前の人の弦音で立って、その次の弦音で引く、という具合です。くわしい表は弓道初段の合格基準と審査内容の間合いの章にあります。

2本目(乙矢)と退場

1本目(甲矢・はや)を射たら、2本目(乙矢・おとや)に移ります。ここは場面で少し違います。審査の要領では、甲矢のあとは決められた弦音で弓を立て、矢を番えて待ってから立ちます。競技の要領(坐射)では、射終わったら跪坐して矢を番えて立つ形です。

乙矢を射終わったら、1番から順に退場し、退場口でも上座に意識を向けて揖をします。審査の注意事項にも競技の要領にも、行射の前後の動作が間延びしないように、と書かれています。

体配の基本の姿勢と動作|跪坐・歩き方・揖・執弓

流れの中で何度も出てくるのが、立つ・座る・歩く・回る・礼をする、といった基本体です。スポーツ庁の動画と中学校の指導書で、説明が一致している要点を表にまとめました。

動作要点
立った姿勢背筋とうなじを伸ばし、目線は約4m先の床
坐った姿勢背筋を伸ばし、目線はやや下へ。正坐は両足の親指を軽く重ねる
跪坐つま先を立て、膝を床につけて腰を下ろす。次の動作に移りやすい姿勢
立ち方腰を浮かせて膝立ちになり、左足から立ち上がって足をそろえる
坐り方右足を半足ほど後ろへ引き、上体を保ったまま膝をつく
歩き方上体をまっすぐ保ち、足の裏を大きく見せないすり足で歩く
回り方回る側の足を、反対の足のかかとに接するようにして90度向きを変える。腰を中心に回る
揖上体を約10cm前に傾ける
執弓の姿勢左手で弓の握り、右手で矢を持ち、両拳を腰に。立った姿勢では末弭(うらはず)を床から約10cmに
スポーツ庁「日本の武道を学ぼう」弓道02・05〜07と『中学校武道必修化指導書 弓道編』で一致する内容

跪坐(きざ)|つま先を立てて座る

跪坐は、つま先を立て、膝を床につけて腰を下ろした姿勢です。正坐と違って足の指を立てているので、すぐに立ち上がれます。坐射では本座と射位の両方でこの姿勢をとります。

スポーツ庁の動画では、立った姿勢から右足を半足ほど後ろに引き、右膝、左膝の順に床につけて、つま先立ちのまま腰を下ろす流れで説明されています。上体を傾けず、まっすぐ沈むのがポイントのようです。

跪坐は、始めたばかりの人が「つらい」「足がしびれる」とよく挙げる姿勢でもあります。慣れるにつれて少しずつ楽になってくる、という声もよく見かけます。ただ、膝や足首に痛みが続くなら無理はせず、先生に相談してみてください。審査では、事情があれば申し出て立射で受けられる仕組みもあります(弓道の審査とは)。

歩き方と回り方|すり足で、腰から向きを変える

射場ではすり足で歩きます。上体をまっすぐ保って、膝を曲げすぎず、足の裏を大きく返さないように。目線は約4m先の床です。わたしの場合は、以前の抜刀でも同じすり足が基本作法でしたので、こういった所も共通しているのだなと思ったものです。

歩いていて向きを変えるときは、向きたい方の足を反対の足のかかとに接するようにして90度回し、腰を中心に体を回します。跪坐のまま向きを変えるとき(射位で脇正面に向くときなど)は、腰を浮かせ、両膝はつけたまま足先を開いて90度回ります。この足さばきを「開き足(ひらきあし)」と呼びます。

礼と揖の違い

弓道の礼は、大きく「礼」と「揖」に分かれます。礼は上体を深めにかがめるもので、立って行う立礼と、正坐から行う坐礼があります。揖は上体を10cmほど傾けるごく浅い礼で、立った姿勢でも跪坐でも行います。

使い分けは、稽古の前後に上座や先生へ向ける礼、入場で先頭の人がする礼、本座で的に向かってする揖、といった具合です。入場は「先頭は礼、ほかは揖」なので、自分が大前になったときは入場で礼になることだけ覚えておくと迷いにくいと思います。

執弓(とりゆみ)の姿勢

執弓の姿勢は、弓と矢を持って立つ(座る)ときの基本の姿勢です。入場から射位までは、ほぼずっとこの姿勢で動きます。

和弓の各部の名前。上から末弭、弦と中仕掛け、矢摺籐、握り、本弭。握りは下から約3分の1の位置

左手で弓の握りを持って拳を左腰に、右手で矢を持って拳を右腰に置きます。弓の上の端(末弭・うらはず)は体の前の中央で、立っているときは床から約10cmに保ちます。弓と矢で二等辺三角形を描くように持つ、と説明されています。

矢の持ち方は2通りあります。矢尻(板付)を手の中に隠すように持つ形と、矢尻を前に出して、矢尻から約10cmのあたりを持つ形です。スポーツ庁の動画では前者を武射系、後者を礼射系の持ち方として紹介しています。どちらで持つかは、道場で教わる流れに合わせます。

スポーツ庁「日本の武道を学ぼう」【弓道】06 弓道の基本体(立ち方・坐り方)

坐射と立射の違い

立射(りっしゃ)は、跪坐をせず、立ったまま射位に入って矢を番えて引く形です。違いを表にすると次のようになります。

坐射立射
本座跪坐して揖立ったまま揖
射位で待つ姿勢跪坐し、脇正面に向いて矢を番える立ったまま脇正面に向き、弓を起こして矢を番える
引くとき跪坐から立ち上がって足踏み立ったまま足踏み
主な場面審査の基本の形高校の大会など。審査でも申し出て立射で受けられる
全弓連「弓道競技規則」の行射の要領をもとに整理

坐射の人と一緒に立つときは、坐射に合わせる

同じ立ちの中に坐射の人と立射の人が混ざることもあります。このとき全弓連は、立射の射手は坐射の射手の動作に合わせることを基本にしていて、合わせ方を「立射の作法」として公開しています。

たとえば審査では、射位で坐射の人が向きを変えるのに合わせて足踏みをし、坐射の人が矢を番えるのに合わせて矢を番え、坐射の人が立ち上がるタイミングで次の動作に移る、という形が示されています。自分だけ先に進まず、立ちの全員で一つの流れを作るのが体配なのだと分かります。

審査で立射にしたいとき

審査は坐射が原則なので、膝や足首の事情などで立射にしたいときは、申込書で申し出て、所属する地方の連盟(地連)の承認を得る形です。手続きは弓道の審査とはにまとめています。

立ち順と、5人で動くときの呼び方

何人かが一緒に射場に入るひと組を「立ち(たち)」と呼び、その中の並び順が立ち順です。いちばん前で最初に射る人を大前(おおまえ)、いちばん後ろで最後に射る人を落(おち)と呼びます。ほかの呼び方は弓道用語集にまとめています。

審査や大会の立ち順は、自分で選ぶものではなく主催する連盟などが決め、進行表や受付で知らされる形が多いようです。どの番になっても動けるように、間合いは全部の番で頭に入れておくと安心です。

なお、「弓道 立ち順」で調べると、団体戦で誰を大前や落に置くかという話がたくさん出てきます。これはチームの考え方しだいなので、この記事では扱いません。

体配で見直したいところ

資料に書かれている正しい形から、見直しておきたいところを表にしました。先生に見てもらうときのチェック用に使ってみてください。

場面見直すところ
入場自分が大前なら礼、それ以外は揖
退場上座に意識を向けて揖(道場の決まりも確認)
立つ・座る上体をまっすぐ保ったまま沈む・立つ。立つときは左足から
歩く・回るすり足、目線は約4m先。回るときは腰を中心に
執弓の姿勢立った姿勢では末弭を床から約10cm、弓と矢で二等辺三角形
間合い何番の弦音で何をするか。前後の動作を間延びさせない
立ち全体立射の人は坐射の人に合わせる
全弓連の行射の要領・審査統一基準、スポーツ庁の動画、中学校の指導書をもとに整理

弓を持たずに練習できること

中学校の指導書では、最初の段階(はじめの段階)で、徒弓やゴム弓と並んで、立った姿勢・正坐・跪坐、立ち方・坐り方・礼・揖といった基本の姿勢と動作を学ぶ流れになっています。スポーツ庁の動画でも、まず弓を持たない状態で基本体を見せてから、弓を持った執弓の姿勢に進みます。

つまり、立つ・座る・すり足・揖は、弓がなくても練習できるということです。ただ、弓や矢を持った動きは、道具を傷めたり周りに当てたりしないよう、道場で先生に見てもらいながらのほうが安心です。

射る前の所作は、少しわかってきてから先生のすごさがわかる、というところがあると感じています。体配は地味に見えますが、毎回の稽古で必ずくり返す動きなので、ていねいに積み上げていきたいところです。

弓道の体配のよくある質問

Q. 体配の読み方は?

「たいはい」と読みます。射場に入ってから出るまでの、立つ・座る・歩く・礼をするといった動作の作法のことです。

Q. 「座射」と「坐射」はどちらが正しい?

同じものを指します。全弓連の規則や審査の資料では「坐射」と書かれていて、検索などでは「座射」もよく使われています。

Q. 跪坐がつらいときは?

慣れるにつれて少しずつ楽になってくる、という声もよく見かけます。ただ、痛みが続くときは無理をせず、先生に相談してください。審査では、事情があれば申し出て立射で受けられる仕組みがあります。

Q. 体配は道場ごとに違う?

入場から本座、射位、退場という大きな流れは共通です。一方で、礼をする場所や入る足、矢の持ち方などの細かいところは、道場や流派の系統で違うことがあります。迷ったら、教わっている先生のやり方に合わせるのが確実です。

Q. 体配と射法八節は別のもの?

射法八節は弓を射る動作、体配はその前後と間の動作です。射位で足踏みをするところから八節が始まり、弓倒しのあとはまた体配に戻ります。どちらも審査で見られます。

まとめ|流れを覚え、基本体を積み上げる

体配は、射場に入ってから出るまでの、弓を射る前後の決められた動作です。坐射の流れは、入場して礼(揖)、本座で跪坐して揖、射位へ進んで跪坐し矢を番え、立って射て、順に退場。その一つひとつを支えるのが、立つ・座る・歩く・回る・揖・執弓の姿勢といった基本体です。

細かい作法は道場で違うこともあるので、大きな流れは資料で、細部は先生に、と分けて覚えると整理しやすいと思います。射法や体配の基準を手元で確かめたいなら、全弓連の教本が土台になります。

弓道教本 第一巻(全日本弓道連盟)

射法八節や体配の基本がまとまった一冊です。教室で教わったことを確かめる手元の資料として。全弓連の公式サイトからも購入できます。

審査や射法の関連は、次の記事でも整理しています。

弓道初段の合格基準と審査内容|体配・間合い・射型のポイント
弓道の審査とは|申込から合格発表までの流れと持ち物
射法八節とは|足踏みから残心まで8つの動作を図と動画で整理

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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