弓道を続けていると、稽古中に弦が切れることがあります。教室や部活では、替えの弦を用意しておくよう言われることも多いようです。弦の話は、始めてしばらくすると急に身近になります。
教室では道具の名前が当たり前のように飛び交っていて、わたしも最初は「つる」など何を指しているのかすぐには分かりませんでした。いまも弦は教室で借りていて、自分で買うのはこれからです。なので、買う前に調べたことをここにまとめておきます。
結論から書くと、いまの弦は合成繊維の「合成弦」が主流で、1本500〜1,000円ほど。選ぶときは、長さを弓の寸(並寸・二寸伸など)に、太さ(号数)を弓の強さに合わせるのが基本です。弦は切れる消耗品なので、替えを1〜2本持っておきます。
- 合成弦・麻弦・ループ弦の違い
- 初めての弦の選び方(長さ・太さ・中仕掛け)
- 響・吟・千本弦などの特徴と値段の目安(2026年10月時点)
- 何本用意するか、交換の目安と切れる前のサイン
弓道の弦(つる)とは|弓に張る糸で、いつか切れる消耗品
弦は「つる」と読みます。「弓弦(ゆみづる)」と呼ばれることもあります。弓の上の端(末弭・うらはず)と下の端(本弭・もとはず)に掛けて張る糸で、上の端に掛ける輪の部分を弦輪(つるわ)といいます。矢をつがえるあたりは糸を巻いて太くしてあり、ここが中仕掛け(なかじかけ)です。弦輪・中仕掛けと、弦を掛ける末弭・本弭の位置は下の図のとおりです(各部の名前は和弓とはで詳しく書いています)。

弦は使っているうちに伸びたり傷んだりして、いつかは切れます。稽古の最中に切れることもあるので、弓道では替弦(かえづる)と呼ばれる予備の弦を用意しておくのが当たり前になっています。
弓を買うと弦が付いてくることが多いのですが、それはあくまで最初に張る分。弓を借りている人でも、替弦は自分で用意するよう言われることがあります。このあたりは教室や部活によって違うので、先生や先輩に聞いておくと安心です。弦以外の道具も含めた全体像は弓道の道具一覧にまとめています。
弦の種類|合成弦・麻弦・ループ弦の違い
弓道の弦は、素材で大きく合成弦と麻弦に分かれます。最近は、弦輪があらかじめ作ってある「ループ弦」を使う人も出てきています。
| 種類 | 素材 | 特徴(弓具店などの説明) | 1本の値段の目安 |
|---|---|---|---|
| 合成弦 | 合成繊維 | いまの主流。切れにくく長持ちし、値段も手ごろ。グラス弓・カーボン弓で使うのが一般的 | 約500〜1,000円(高いものは2,000円前後) |
| 麻弦 | 麻 | 弓にやさしく、弦音が澄んでいるといわれる。切れやすく、くすねを塗って補強しながら使う | 2,000円前後から |
| ループ弦 | 高強度の合成繊維 | 両端の輪が最初から作ってあり、自分で弦輪を作らなくてよい。伸びにくく切れにくい | 商品による |
初心者が教室や部活で使う弓はグラス弓やカーボン弓が多いので、最初の弦は合成弦と考えておけば大丈夫です。麻弦は、竹弓を使う人や、弦音や引き心地にこだわる経験者が選ぶもの、という位置づけです。
弦の話になると、よく「弦音(つるね)」という言葉が出てきます。矢を放ったときに弦が鳴る音のことで、この音の高さや澄み方を好みで選ぶ人も多いようです。銘柄ごとの説明に「弦音がよい」と書かれているのは、そのためです。
ループ弦は使ってもいい?
ループ弦は、弦輪を自分で結ぶ手間がなく、切れにくいのが売りです。弦輪づくりは初心者がつまずきやすいところなので、魅力的に見えます。
ただ、弓を作る側からは注意も出ています。全日本弓道具協会は2025年12月にループ弦の使用についての注意を公開しました。和弓には「無理な力がかかったときは、弦が先に切れて弓本体を守る」という考え方があり、切れにくいループ弦では弓に負担が集中しやすいこと、弦輪の大きさを調整できないことなどを挙げて、竹弓へのループ弦の使用は推奨しないとしています。連名した弓師の弓は、ループ弦を使って壊れた場合は保証や修理の対象外になるそうです。
グラス弓やカーボン弓で使っている人もいますが、わたしが調べた範囲では、どの弓なら問題ないと言い切れる資料は見つかりませんでした。初心者のうちは、教室や先生の方針を聞いてから。借りている弓なら、持ち主である教室に確認してからにするのが無難だと思います。
初めての弦の選び方|長さ→太さ→中仕掛けの順に
弦の商品ページを開くと、長さ・太さ・本数と選ぶところがいくつもあって迷います。でも、決める順番を押さえておけば難しくありません。

長さは身長ではなく「弓の寸」に合わせる
弦は、張る弓の長さに合わせて作られています。弓具店の商品も並寸用・二寸伸用・三寸詰用・四寸伸用のように、弓の寸で分かれています。並寸の弓に張るなら並寸用、二寸伸の弓なら二寸伸用。選ぶ基準は自分の身長ではなく、いま使っている弓の寸です。
借りている弓の寸が分からなければ、先生に聞くのがいちばん早いです。弓の長さそのものの選び方は弓道の弓の値段と種類に書きました。
太さ(号数)は弓の強さに合わせる
合成弦には太さの違いがあり、多くは「号」や「細・太」で表されています。強い弓ほど太い弦を使うのが基本で、弓具店は弓の強さ(弓力)ごとの目安を出しています。たとえば次のような形です。
| 表し方 | 目安 |
|---|---|
| 号数(1号・2号・3号) | 1号=13kg以下/2号=14〜17kg/3号=18kg以上 |
| 細・太(響など) | 細=13kg以下/太=13kg〜 |
見てのとおり、同じ店の中でも銘柄によって表し方が違います。号数の目安は、ほかの弓具店でもほぼ同じでした。なので、買う銘柄の商品ページにある目安で選ぶのが確実です。自分の弓が何kgなのかは、先生に確認しておきましょう。弓の強さは、上達や体力に合わせて先生と相談しながら変えていくものなので、弦の太さも弓を替えたら見直します。
中仕掛けが付いた弦もある
中仕掛けは、本来は弦を買ったあとに自分で作るものです。ただ、初心者がいきなり作るのは難しいので、中仕掛けを作ってある弦も売られています。千本弦のように、同じ弦で中仕掛けを作ってあるものと作っていないものを売っている店もあります。作り方を覚えるまでは、作成済みの弦を選ぶのも一つの手です。ただし、弦輪は自分で作るので、そこは先生や先輩に手伝ってもらいましょう。中仕掛けの作り方は弓道の中仕掛けの作り方|太さの目安と位置・道具にまとめています。
教室や先生の指定があれば、それに合わせる
教室や部活によっては、使う弦をまとめて決めていることもあります。そういう場合は迷わずそれに合わせるのがいちばんです。指定がなければ、ここまでの順番で選べば大きく外すことはありません。
代表的な弦と値段の目安【2026年10月時点】
弦の銘柄は本当にたくさんあります。ここでは、検索でもよく名前が挙がる3つを、弓具店の説明と値段の帯だけで並べました。どれが上ということではなく、選ぶときの手がかりとして見てください。
| 銘柄 | 特徴(弓具店の説明) | 値段の目安 |
|---|---|---|
| 千本弦(せんぼんつる) | 初心者向けの手ごろな合成弦。中仕掛けを作ってあるものも選べる | 1本 約550〜620円 |
| 響(ひびき) | 安定性があり、澄んだ高い弦音が特長。少し硬めで伸びにくい。学生に人気 | 2本入り 約1,650〜2,100円 |
| 吟(ぎん) | 複数の弓具店が扱う合成弦。上位の「特作」は強度・弾性の高い繊維を使っている | 1本 約1,000円/2本入り 約1,900円(特作は少し高め) |
ざっくり言うと、合成弦は1本あたり500〜1,000円くらいが中心です。2本入りで売られていることが多いのは、張る分と替えの分をまとめて買う人が多いからだと思います。もっと高い銘柄もありますが、最初から選ぶ必要はなさそうです。
何本用意する?
張っている1本とは別に、替弦を1〜2本持っておく人が多いようです。新しい弦は張ってしばらくは伸びが出るので、何射か引いてなじませた弦を替弦にしておく、という経験者の声もあります。替弦は、弦巻(つるまき)という輪の形の入れ物に巻いて持ち歩きます。弦巻については弓道の弦巻の選び方と使い方|素材・大きさ・弦の巻き方にまとめています。
通販で買うときは送料にも気をつけたいところです。弦はメール便(ネコポスなど・送料330円ほど)で送れる店が多いものの、1本数百円の弦だと送料のほうが目立ちます。2本入りを選ぶか、ほかの小物とまとめて買うと割安です。
学生に人気の合成弦「響」と、中仕掛け付きの「千本弦」
山武弓具店・楽天市場で、響(2本入り)1,980円、千本弦(中仕掛け付き・1本)610円(2026年10月時点・送料別)。どちらも並寸・二寸伸から選べます(弦輪は自分で作ります)。長さは弓の寸、太さは弓の強さに合わせてください。
弦の交換時期と、切れる前のサイン
「弦は何射で替えるのか」は、調べてみると答えにかなり幅がありました。合成弦は切れるまで使うのではなく、600〜700射ほどを目安に替えるよう勧めている弓具店があります。一方で、もっと早め(数百射)に替えるよう勧める弓師もいれば、千射を超えて使うという経験者もいます。使う弓の強さや引く本数、手入れの具合で寿命はかなり変わるようです。
なので、射数はあくまで目安にして、最後は弦の状態を見て決めるのが現実的だと思います。
切れる前のサイン
替え時のサインとしてよく挙がるのは、弦の毛羽立ちやほつれです。特に、矢をつがえる中仕掛けのまわりや、弦輪の近くは傷みやすいところです。
なお、合成弦は使っているうちに少しずつ伸びます。伸びてきたときは、交換ではなく、まず弦輪を直して調整するものだそうです。ただ、弦輪を何度も直すと弦が切れやすくなるので、先生に相談しながら直しましょう。
試合や審査では、弦が切れることは「失(しつ)」、つまり失敗の一つとして扱われます。傷んだ弦は、切れる前に替えておくほうが安心です。
試合や審査の前は、数日前に張り替える
張り替えたばかりの弦は伸びが出て落ち着かないので、大事な日の直前ではなく、数日前に新しい弦に替えて、何日か引いてなじませておくという経験者の声があります。大会によっては、弦が切れたときの替弦の受け渡し方まで要項で決められています。
弦を長持ちさせる扱い方
稽古が終わったあと弦を外すかどうかは、弓の種類や教室のやり方によって違うので、先生の指示に従うのがいちばんです。替弦は弦巻に巻いて、折れ曲がらないように持ち運びます。麻弦を使う場合は、くすねを塗って補強しながら使います(合成弦には要らない、というのが弓具店の説明です)。
弦輪の作り方の要点

新しい弦を張るときに、まず必要になるのが弦輪です。弦の上の端を輪にして、弓の上の端(末弭)に掛ける部分のことです。
結び方には一重結び・二重結びなどがあります。日本武道協議会の中学校の弓道の指導書では、二重結びの図を載せたうえで、次のような注意を挙げています。
- 弦輪が末弭に対して小さすぎると、弦が切れやすくなる
- 弦輪が大きすぎると不安定で、弓のためにもよくない
- 弦輪を何度も直していると、弦が切れやすくなる
文章や図だけで結び方を覚えるのは、正直かなり難しいと思います。慣れないうちは、輪の大きさが合わなかったり、結び目がずれたりするのはよくあることのようです。最初の1本は、先生や先輩に作ってもらうか、横で見ながら一緒に作るのが確実です。何度も直すと弦が傷むので、「一回で決める」ためにも、最初は教わりながらがよさそうです。
弦輪ができたら、次は中仕掛けです。こちらも弓道の中仕掛けの作り方|太さの目安と位置・道具にまとめています。
弓道の弦についてよくある質問
Q. 初心者におすすめの弦は?
教室や先生の指定があれば、それがいちばんです。指定がなければ、弓の寸に合った長さで、弓の強さに合った太さの合成弦を選びます。中仕掛けをまだ作れないなら、中仕掛け付きの弦を選ぶと、中仕掛けを作る手間が省けます(弦輪づくりは残ります)。銘柄で選ぶのは、そのあとで十分だと思います。
Q. 弓道の弦の値段はいくら?
合成弦なら1本500〜1,000円くらいが中心で、2本入りなら2,000円前後です。麻弦は2,000円前後からと、少し高めになります(2026年10月時点)。
Q. 伸びにくい弦はある?
伸びにくさを特長にしている銘柄はあります。上の表の響も、弓具店の説明では「伸びにくい」とされています。ただ、どの合成弦も張ったばかりのころは伸びが出るので、張り替えてしばらくはなじむまで様子を見ます。
Q. 中仕掛け付きと付いていない弦、どちらを買えばいい?
中仕掛けを自分で作れるなら、付いていないほうを選んで、自分の矢に合わせて作るのが基本です。まだ作れないうちは、中仕掛け付きの弦が便利です。ただ、矢の筈(はず)との合い具合や中仕掛けの位置は、使う矢や弓によって違うので、付いている中仕掛けが合うかは、先生に見てもらうと安心です。
Q. 弦が切れたらどうする?
弦輪と中仕掛けまで作っておいた替弦に張り替えます。弦を張る作業は弓に力をかけるので、慣れないうちは先生や先輩に見てもらいながら行いましょう。切れた場所が中仕掛けや弦輪のあたりなら、作り方や大きさを見直すきっかけにもなります。
まとめ|長さは弓の寸、太さは弓の強さ、替えは1〜2本
弓道の弦は、いまは合成弦が主流です。選ぶときは長さを弓の寸に、太さを弓の強さに合わせる。中仕掛けを作れないうちは、作成済みの弦を選ぶ手もあります。替弦は1〜2本持っておき、射数の目安は店や人で幅があるので、毛羽立ちやほつれが出てきたら早めに替えます。
弦は小さな道具ですが、切れると稽古がそこで止まってしまう道具でもあります。わたしも自分の弓を持つ日が来たら、まずは替弦を用意するところから始めるつもりです。弓本体や、道具全体の費用は次の記事で整理しています。
