「そろそろ自分のゆがけ(弽・かけ)を」と言われて弓具店のページを開くと、三つがけ、四つがけ、堅帽子、控え付き……と知らない言葉が並んでいます。値段も1万円のものから10万円を超えるものまであって、どれが自分向けなのか見当がつきません。
わたしはいま、教室で借りたゆがけを使っています。初めて着けたときは、手が自分のものではないような違和感があって、外したあとは手がぐったり疲れていました。借り物でもこれだけ存在感のある道具なので、自分のものを買うときは慎重に選びたい。そう思って、買う前に調べたことをまとめたのがこの記事です。
先に結論を書くと、初心者の最初の1つは「三つがけ・堅帽子」で、値段は約2万〜3万円。標準的な控え付きのものは2.5万円前後からです。そしてサイズは自分で決めず、弓具店に手を見てもらって合わせるのが基本です。
内容は、全日本弓道連盟(以下、全弓連)の案内と、弓具店各社の説明・通販サイトの掲載価格をもとに整理しました。
- ゆがけとは何か、「かけ」「弽」「弓懸」との違い
- 三つがけ・四つがけ、堅帽子・和帽子、控えの有無の違い
- ゆがけの値段の相場(2026年10月時点)
- 初心者はいつ・どれを・どうやって買えばいいか
- 買ったあとに気をつけること
ゆがけ(弽・かけ)とは|弓道で右手にはめる鹿革の手袋

ゆがけは、弓を引くときに右手にはめる鹿革の手袋です。弓道では弦を右手の親指にかけて引くので、その親指を守り、弦をかける場所を作るのがゆがけの役目。全弓連も、弓・矢・弦と並ぶ用具として道具の案内ページで紹介しています。
素手に直接はめるのではなく、先に「下がけ」という木綿の薄い手袋を着け、その上からゆがけをはめます。
読み方と呼び方:ゆがけ・かけ・弽・弓懸は同じもの
漢字では「弽」または「弓懸」と書き、どちらも「ゆがけ」と読みます。縮めて「かけ」と呼ぶことも多く、弓具店の商品名は「弓がけ」「カケ」「ユガケ」と店によってばらばらです。指しているものはすべて同じなので、「弓道 かけ」で探しても「ゆがけ」で探しても、同じ道具にたどり着きます。
各部の名前:帽子・弦枕・控え・紐
商品説明を読むのに必要な名前は、次の4つです。
| 名前 | どこのこと | 役割 |
|---|---|---|
| 帽子(ぼうし) | 親指を覆う部分 | 弦をかけるところ。ゆがけでいちばん大事な部分 |
| 弦枕(つるまくら) | 帽子に付いている段(溝) | ここに弦を引っかける |
| 控え(ひかえ) | 親指の付け根から手首にかけて | 芯が入っていて手首を支える。芯のない「控えなし」もある |
| 紐(かけ紐) | 手首に巻く紐 | ゆがけを手に固定する |
ゆがけの種類|三つがけ・四つがけと帽子の違い
ゆがけの商品名は、「堅帽子 三ツカケ 控え付き」のように、指の数・帽子の硬さ・控えの有無の組み合わせでできています。この3つが読めれば、弓具店の一覧がだいぶ見やすくなります。

| 種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 三つがけ | 親指・人差し指・中指の3本を覆う。もっとも一般的 | 初心者から上級者まで。最初の1つはこれ |
| 四つがけ | 薬指まで4本を覆う | 強い弓を引く人。四つがけを使う流派・教室の人 |
| 堅帽子(かたぼうし) | 親指に木や角の芯が入っていて硬い | いまの標準。初心者もここから始めることが多い |
| 和帽子(わぼうし) | 親指に芯がなく柔らかい。柔帽子とも | 初心者・弓力の弱い人向けとして売られている。練習・体験用にも |
| 控えなし | 手首側に芯がなく柔らかい | 初心者・弓力の弱い人向けとして売られている |
三つがけ:初心者の定番
親指・人差し指・中指の3本を覆う形で、弦をかけた親指を中指で押さえて引きます。弓具店の説明では、いま使われているゆがけの大半がこの三つがけ。初心者向けとして売られているゆがけも、ほぼすべて三つがけです。とくに指定がなければ、最初の1つは三つがけと考えて大丈夫です。
四つがけ(四つ弽):強い弓を引く人、流派や先生の方針で使うもの
薬指まで覆う、指4本のゆがけです。弓具店の説明では、力の強い弓を引くときに使われることが多く、段位の高い人に使用者が多いとのこと。流派や教室によっては、四つがけを基本にしているところもあります。値段は、同じ仕様の三つがけより5,000〜8,000円ほど高めです。
三つがけか四つがけかは教室や先生の方針で決まることが多いので、「うちの教室は三つがけでいいですか」と先生に一度聞いておけば十分です。なお、指5本をすべて覆う「諸がけ(もろがけ)」もありますが、使う人はごく一部で、初心者が選ぶ場面はありません。
帽子の硬さと控え:「堅帽子」「和帽子」「控えなし」の読み方
標準的な形は、親指に芯の入った堅帽子で、手首側にも芯のある控え付きです。弓具店も「もっとも一般的な形で、初心者から上級者まで幅広く使われている」と説明しています。
これに対して、親指が柔らかい和帽子や、手首側が柔らかい控えなしは、「初心者や弓力の弱い人でも扱いやすい」として売られています。練習・体験用として1万円ほどで売られているものも、この柔らかいタイプです。どちらから始めるかは教室や先生の方針によるので、ここも買う前に確認しておきたいところです。
ゆがけの値段の相場【2026年10月時点】
ゆがけの値段は、作りによって大きく4つの帯に分かれます。
| 区分 | 値段の目安 | どんなもの |
|---|---|---|
| 練習・体験用 | 約1万円 | 親指まで柔らかい和帽子。体験会や入部直後の練習向けとして売られている(扱う店は少ない) |
| 初心者向けの三つがけ | 約1.8万〜2.1万円 | 控えなしや入門モデル。下がけが付くものもある |
| 標準的な既製品(堅帽子) | 約2.5万〜3.2万円 | 初心者から長く使える定番。手形合わせの商品もこの価格帯 |
| 上質な革のもの・誂え(オーダー) | 3万円台〜 | 革と作りによっては10万円を超える |
値段の差は、革の質と仕立ての丁寧さ、そして手に合わせて作る度合いによるものです。ゆがけは鹿革で作られていて、きめの細かい上質な革を使うほど高くなります。
初心者が最初に買うのは、上から2つめか3つめです。控えなしや入門モデルなら2万円前後、堅帽子・控え付きの標準的なものなら2.5万〜3万円ほど。楽天市場店と弓具店の自社通販で、値段はほとんど変わりません。
手形で選んでもらえる三つがけ(堅帽子)
山武弓具店の「翔鳳 並」手形合わせは24,800円(2026年10月時点・楽天市場・送料無料)。右手の手形を郵送すると、店が合うものを選んで送ってくれます。三つがけでよいかは、注文の前に先生に確認してください。
ゆがけ以外も含めた道具全体の費用は、こちらにまとめています。
初心者のゆがけの選び方
いつ買う?教室のあいだは借りて、続けると決めたら買う
ゆがけは、始めてすぐに買わなくても大丈夫です。全弓連も、初心者のうちは学校や道場で道具を借りられることがある、と案内しています。わたしの通っている教室も貸出です。
一方で弓具店は、貸出があっても早めに自分のものを持つことを勧めています。ゆがけは使い込むうちに自分の手の形になじんでいく道具で、なじむまでに時間がかかるからです。買う時期の目安として「始めて数か月〜半年ほど」を挙げる店もあります。
まとめると、教室のあいだは借りて、続けると決めたら最初に買う道具のひとつ、という位置づけです。弓道部では、弓具店が学校に来て採寸・販売したり、部でまとめて注文したりすることがあるので、顧問の先生や先輩の案内を待ってください。
サイズは自分で決めない:手形を取って弓具店に合わせてもらう
ここがいちばん大事なところです。ゆがけは手袋のようにS・M・Lで気軽に選べる道具ではありません。弓具店の説明では、決め手になるのは帽子(親指)の長さが自分の親指に合っているかどうか。しかも手作りなので、同じサイズ表記でも大きさや形に個体差があります。
なので、いちばん確実なのは弓具店の店頭で実際にはめて、店の人に見てもらうことです。近くに弓具店がない場合は、「手形合わせ」という方法があります。
- 紙の上に右手を置き、手首までペンでなぞって手形を取る
- 手形を弓具店に送る(郵送のみの店、画像をメールで送る店など、方法は店ごとに違う)
- 店が在庫の中から、手に合うゆがけを選んで送ってくれる
手形合わせの商品は、既製品と同じ値段で扱っている店もあります。通販で買うなら、サイズ表を見て自分で選ぶ商品より、手形合わせの商品を選ぶほうが失敗が少ないと思います。コピー機やFAXは縮尺が変わるので受け付けない、という店もあるので、送り方は商品ページの指示どおりにしてください。
先生に聞いておくこと
買う前に、次のことを先生に確認しておくと選ぶ範囲が一気に狭まります。
- 三つがけでよいか(四つがけを使う教室ではないか)
- 堅帽子・控え付きの標準的なものでよいか
- 決まった弓具店や、まとめて注文する機会があるか
- いつごろ買うのがよいか
下がけも一緒に用意する
ゆがけの下にはめる下がけは、手の汗を吸ってゆがけを守るためのものです。全弓連も「必ず付ける」と案内しています。値段は白無地の三つがけ用で1枚160〜360円ほど。汗をかいたら替えるものなので、洗い替えに2〜3枚あると安心です。ゆがけに付属している商品もあります。
ゆがけ(手形合わせ)と下がけ
ゆがけは、右手の手形を郵送して合うものを選んでもらう「翔鳳 並」手形合わせ(24,800円)。下がけは白・綿100%の三つがけ用(1枚160円・送料別)。どちらも山武弓具店・楽天市場・2026年10月時点の価格です。
買ったあとに気をつけること
ゆがけの素材の鹿革は、水分と湿気に弱い革です。扱いで気をつけるのは次の3つ。
- 濡らさない:濡れた手で触らない。雨の日の持ち運びにも注意する
- 汗を乾かす:使ったあとは陰干しする。下がけはこまめに替える
- 自分専用にする:使う人の手の形になじんでいく道具なので、買ったら自分だけのものとして扱う
弓具店の説明では、使い始めのゆがけは革が硬く、稽古を重ねるうちに少しずつ手になじんでいくとのこと。着け方や紐の結び方、手入れの手順は、別の記事にまとめています。
ゆがけについてよくある質問
Q. かけ・ゆがけ・弽は違うものですか?
同じものです。「弽」「弓懸」はどちらも「ゆがけ」と読み、「かけ」はその略称です。
Q. 中古やお下がりのゆがけは使えますか?
使えないわけではありませんが、前の持ち主の手の形になじんでいるうえ、帽子の長さが自分の親指に合うとは限りません。先輩や知人から譲ってもらえる場合は、使う前に先生に見てもらってください。初心者がフリマアプリなどで中古を買うのは、わたしはおすすめしません。
Q. ゆがけは洗えますか?
水洗いはしません。鹿革は水分に弱いので、汗は下がけに吸わせ、下がけのほうを洗います。使ったあとは陰干しして乾かします。
Q. 何年くらい使えますか?
弓具店の説明では、手入れをしながら使えば10年以上使い続けられる道具です。指先の革がすり切れたときに修理を受け付けている弓具店もあります。
まとめ|最初の1つは三つがけ・堅帽子、サイズは弓具店に合わせてもらう
ゆがけは、右手にはめる鹿革の手袋です。初心者の最初の1つは三つがけ・堅帽子で、値段は約2万〜3万円。標準的な控え付きのものは2.5万円前後からです。四つがけや和帽子は、教室や先生の方針があるときに選ぶものです。
教室のあいだは借りて、続けると決めたら、先生に種類を確認してから買う。サイズは自分で決めず、店頭か手形合わせで弓具店に選んでもらう。この順番を守れば、大きく外すことはないはずです。
ゆがけと同じころに揃えることが多い弓道着と、その次に必要になる矢については、こちらの記事にまとめています。
弓道着の選び方|上衣・袴・帯・足袋の基本セットと相場
弓道の矢の種類と値段|素材・羽根・長さの選び方
手形で選んでもらえる三つがけ(堅帽子)
右手の手形を郵送すると、店が合うゆがけを選んで送ってくれます。山武弓具店「翔鳳 並」手形合わせ 24,800円(2026年10月時点・楽天市場・送料無料)。
