教室や部活で「次は巻藁(まきわら)ね」と言われて、何をするのか少し不安になっていませんか? あるいは、家でも巻藁を引けたらいいのに、と考えている人もいるかもしれません。
わたしもいま、教室で巻藁と的前を行き来しているところです。もちろん自分の巻藁は持っていなくて、家に置くのはずっと先の話。だからこそ、巻藁の前で守ることや、家に置くなら何がそろえばいいのかを、全日本弓道連盟(全弓連)の案内や弓具店の説明を読み比べて整理しました。
ちなみに、以前通っていた抜刀の教室では、藁を刀で切っていました。弓道では今度はその藁に矢を射込むのだから、なんだか面白いものです。
結論から書くと、巻藁は、約2m(弓一杖)の距離から矢を射込んで、型を確かめるための練習用の的です。道場に備え付けのものを使うのが基本で、個人で買うのは自宅でも引きたい人向け。本体は3万円前後で、ほかに台・矢止め・巻藁矢も要ります。
なお、空手にも「巻藁」と呼ばれる突きの鍛錬具があるようでしたが、この記事は弓道の巻藁の話です。
- 巻藁とは何か、稽古のどの段階で引くのか
- 巻藁の前で守ること(距離・高さ・矢止め・矢の抜き方)
- 巻藁の大きさ・素材と、台・巻藁矢を含めた値段の目安(2026年10月時点)
- 自宅に巻藁を置く前に確かめることと、巻藁ネットという選択肢
巻藁(まきわら)とは|約2mから型を確かめる練習用の的
巻藁は、藁を固く束ねて台に乗せた、弓道の練習用の的です。全弓連の初心者向けの案内では、弓道・弓術の型を稽古するための的で、藁を矢が突き抜けない長さ・矢を傷めない程度の強さに束ねたもの、と説明されています。
的前(まとまえ)の的が28m先にあるのに対して、巻藁はすぐ目の前。外れる心配がほとんどないぶん、自分の動作そのものに集中できます。
巻藁で練習する理由
よく言われるのは、当たり外れを気にせず、射形や離れを確かめられることです。的前だとどうしても的中が気になって、体の使い方がおろそかになりがち。巻藁なら狙う気持ちがほとんど要らないので、型のずれに気づきやすい、という説明をよく見かけます。
しかも、巻藁は初心者だけの練習ではありません。全弓連は「的前の稽古とあわせて巻藁の稽古も大切」としていて、学校の授業向けの指導書でも、巻藁練習は的前で引くのと同じくらい大事な練習として扱われています。的前に出られるようになってからも、ずっと続く練習なんですね。
稽古のどの段階で引くのか
初心者の稽古は、弓を持たない徒手(としゅ)の動作から始まり、ゴム弓、素引き(矢をつがえずに弓を引く)、巻藁と進んで、的前に立つ、という順番が一般的です。教室での流れは大人から弓道を始めるにはにまとめています。
正直、素引きや巻藁の期間は、矢を的に向けて射てないので地味に感じます。それでも、ここで形を作っておくのが的前の近道なのだろうな、と思いながら引いています。巻藁の期間がどのくらい続くかは、教室や部活によってまちまちです。家でできる練習(徒手・ゴム弓)については弓道の筋トレは必要?家でできるゴム弓練習で書いています。
巻藁には「巻藁矢」を使う
巻藁には、巻藁専用の矢(巻藁矢)を使います。羽根のない「棒矢(ぼうや)」と、羽根の付いたものがあります。
ここで覚えておきたいのが、羽根のない矢は的前では使えないこと。全弓連は、危険防止のために羽根のない矢(巻藁用の矢など)を的前で使うことを禁止しています。巻藁矢と的矢は分けて持っておく、ということですね。矢の種類全体は弓道の矢の種類と値段にまとめています。
巻藁の前で守ること|距離・高さ・矢止め
巻藁は目の前の的なので、つい気軽に引けそうに思えます。でも、矢は近い距離でも十分に危ないもの。全弓連の「道具について」の案内と、学校の授業向けの指導書をもとに、巻藁の前で守ることを図にまとめました。

距離は弓一杖(約2m)。近すぎても遠すぎてもだめ
巻藁との距離は、弓一杖=弓1張の長さ、約2mです。全弓連の案内では、この距離を必ず保ち、それより遠くからも近くからも引いてはいけない、とされています。
距離の目安として、弓を水平にして端が巻藁に届くくらい、と紹介している経験者のサイトもありました。道場では、先生に立ち位置を確かめてもらうのが確実です。
巻藁に正対して、目線の高さに中心がくるように
足踏みは巻藁と正対するように取り、矢の着点は自分の唇の高さあたりに集めるのが大切、と全弓連は書いています。巻藁の高さは、足踏みしてまっすぐ見た目線が、巻藁の中心にくるものを使うのが基本です(学校向けの指導書)。
引き方そのもの(狙い方や離れの直し方)は、教わっている先生に見てもらうところ。射法八節の流れは射法八節とはで整理しています。
後ろに矢止めを置き、矢を抜くときも周りを見る
巻藁の後ろには、矢止め用の畳や板を置きます。矢が巻藁から外れたり、抜けたりしたときの備えです。そもそも全弓連は、人のいる方に向かって矢をつがえたり、打ち起こしたりすることを絶対禁止としています。巻藁の向こう側に人が来ない場所で引く、ということですね。
射込んだ矢を抜くときも気が抜けません。抜くのは後ろに人がいないことを確かめてから。矢筈(やはず)がまわりの人に当たらないよう気をつけ、左手で巻藁を押さえて、右手で巻藁に近いところを持って、2〜3回に分けて抜きます。
巻藁の種類と値段|大きさ・素材・台・巻藁矢
ここからは、自分で巻藁をそろえたい人向けの話です。巻藁は本体だけでは引けません。本体・台・矢止め・巻藁矢がひとそろいになって、はじめて練習できます。
| 品目 | 値段の目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 巻藁(藁・ゴザ巻き) | 約2.7万〜3.4万円 | 尺二寸(直径約36cm)と尺五寸(約45cm)が中心。自宅向けの小型もある |
| 巻藁(ポリプロピレン製) | 約3万〜4.4万円 | 藁より軽く、藁くずや虫の心配が少ない |
| 巻藁台 | 約1.1万〜3.7万円 | パイプ製は1万〜2万円台、木製は3万円台が中心。巻藁の大きさに合うものを選ぶ |
| 巻藁ネット | 約1万円 | 巻藁の代わりに張るネット。ゴムの矢尻で引く |
| 巻藁矢 | 棒矢 約2,000〜2,600円 羽根付き 約3,400〜4,600円 | 矢尺は指導者と相談して決める |
大きさ|道場は大きめ、自宅向けには小さいものも
巻藁の大きさは、矢が当たる面の直径で表します。全弓連は稽古用の巻藁の理想を直径45〜54cmとしています。
弓具店では、尺二寸(約36cm)や、直径30cm前後・長さ50cmほどの小型の巻藁も「自宅練習向け」として売られています。ただし小さいものは、強い弓だと矢が突き抜けやすくなることも。ある弓具店は、20kg以上の弓なら小型ではなく尺二寸・尺五寸の巻藁をと案内していました。自分の弓に合う大きさは、買う前に先生や弓具店に聞いておくと安心です。
素材|藁・ゴザ巻き・ポリプロピレン
昔ながらの藁の巻藁のほかに、まわりをゴザで包んだもの、ポリプロピレン(PP)製のものがあります。
藁の巻藁は、使うと藁くずが落ちるのと、湿気や虫に気をつける必要があります。弓具店の説明では、雨に濡らさない・湿気の多い場所では蒸れないようにする・室内で使うならほこりや虫に注意、とされていました。PP製は藁の4分の3ほどの重さで、藁くずが出ず、虫も出にくい、というのが売りです。そのぶん、同じ大きさの藁の巻藁より値段は少し高めです。
本体だけでは引けない|台と送料も見ておく
巻藁は台に乗せて使います。台は別売りのことが多く、パイプ製なら1万円台から、木製だと3万円台です。小型の巻藁専用の台など、乗せられる大きさが決まっているものもあります。
つまり、本体と台だけで4万円前後から(木製の台なら6万円前後)。さらに巻藁や台は大型品なので、個人宅あてだと送料が数千円かかる店もあります。弓具店によっては、注文から発送まで1〜2か月ほどかかる巻藁もあるので、急ぐなら納期も確かめておきましょう。
「巻藁」と書かれた安い的は、弓道用か確かめる
通販サイトで「巻藁」と検索すると、数千円の商品もたくさん出てきます。その中には、アーチェリー用の藁の的(ターゲット)として売られているものも混ざっています。
弓道の巻藁は、矢が突き抜けない長さに藁を束ねたものです。安いものを選ぶときは、商品ページで弓道用か・長さ(奥行き)はどれくらいか・何kgの弓まで使えるかが書かれているかを確かめてください。書かれていなければ、弓具店に問い合わせるのが確実です。
交換の目安は「矢が簡単に抜けるようになったら」
巻藁は使ううちに傷んでいきます。弓具店の説明では、矢が簡単に抜けるようになったら交換の目安。長く使いすぎると、中心に藁が詰まって硬くなり、矢が跳ね返ることもあるそうです。替える時期は指導者に相談して、早めに、とされていました。
自宅用の小型巻藁と巻藁矢
山武弓具店の小型巻藁(直径約28〜30cm・長さ約50cm)は楽天で28,800円(送料無料)、巻藁矢(棒矢)は2,320円(2026年10月時点)。巻藁台と矢止めは別に必要です。巻藁矢の長さは指導者と相談してから注文してください。
弓具店の選び方は弓道具店の探し方にまとめています。
自宅に巻藁を置く前に確かめること

弓具店では自宅用の巻藁や巻藁ネットも売られていて、実際に家で巻藁を引いている人もいます。ただ、どれも自分の弓・矢・ゆがけがそろっていることが前提。教室で弓を借りている段階なら、まずは道場で引くのが基本です。自分の弓をいつ買うかは弓道の弓の値段と種類で書いています。
そのうえで、置く前に確かめたいことを表にしました。
| 確かめること | 足りないときは |
|---|---|
| 自分の弓・矢(巻藁矢)・ゆがけがある | 道場で引く。家ではゴム弓まで |
| 約2m+巻藁+矢止めを一直線に取れる | 巻藁ネットか、道場で引く |
| 弓(約2.2m)を打ち起こしても天井や照明に当たらない | 庭など屋外を検討する。無理なら道場で |
| 後ろに人が来ない・矢止めを置ける | 置き場所を変える。確保できなければ置かない |
| 藁くず・湿気・虫の対策ができる | PP製の巻藁か巻藁ネットを検討する |
| 先生に、家で引いてよいか相談した | 先に相談する。形が固まるまでは、道場で見てもらいながら引くのが安心 |
巻藁ネットという選択肢
本格的な巻藁を置けない人向けに、巻藁ネットという道具もあります。たとえば小山弓具の巻藁ネットは、約95cm四方のネットを紐などで固定して使うもので、9,900円(2026年10月時点)。巻藁矢の先に専用のゴムの矢尻を付けて引きます。
注意したいのは、鉄の矢尻は必ず外すこと。矢尻は簡単に付け外しできないので、ネット専用の巻藁矢を用意するよう案内されています。手軽とはいえ、自分の弓・矢・ゆがけが前提なのは巻藁と同じです。
始めたばかりなら、まずは道場で
Q&Aサイトなどを見てみても、やはり初心者の巻藁の自主練には「指導者のいるところでやったほうがいい」という声が多く見られました。ひとりで引いて形が崩れると、あとから直すのが大変、という理由を挙げる人もいます。
わたしも、家に巻藁を置くのは、自分の弓を持って形が落ち着いてからの話だと思っています。それまでは、道場の巻藁で先生に見てもらいながら引くのがいちばんの近道なのかな、と。
巻藁についてよくある質問
Q. 巻藁の代わりになるものはありますか?
全弓連の案内には、練習の初期は畳を巻藁の代わりに使うこともある、とあります。家で巻藁を置けないなら、巻藁ネットが代わりになります。どちらも、自分の弓・矢・ゆがけと安全の確保が前提です。
Q. 審査の学科で「巻藁練習の効用」が出ると聞きました
全弓連が公表している令和8年度の学科試験問題では、参段のA群に「巻藁練習の効用」があります。問題の形や答案の組み立て方は弓道審査の筆記(学科)の書き方にまとめています。
Q. 巻藁はどのくらいの期間やるものですか?
的前に出るまでの期間は、教室や部活、本人の上達しだいでまちまちです。そして、的前に出たあとも巻藁の稽古は続きます。期間を気にするより、先生に「巻藁で何を確かめればいいか」を聞いておくほうが役に立つと思います。
Q. 巻藁は自分で作れますか?
稲わらを束ねて自作している人もいます。ただ、矢が突き抜けない固さに締めるのは簡単ではありません。安全にかかわる道具なので、はじめは弓具店の巻藁を選ぶほうが安心です。
まとめ|巻藁は「距離・正対・矢止め」。自宅はそろってから
巻藁は、約2mの距離から矢を射込んで、型を確かめるための的です。距離は弓一杖、巻藁に正対、後ろに矢止め、矢を抜くときは後ろを確かめる。この4つは、道場でも家でも変わりません。
自宅に置くなら、本体と台で4万円前後から。自分の弓・矢・ゆがけ、置き場所、先生の了解がそろってからの話です。家での練習は弓道の筋トレは必要?家でできるゴム弓練習、巻藁矢を含む矢の話は弓道の矢の種類と値段、道具の全体像は弓道の道具一覧もどうぞ。
