射法八節とは|足踏みから残心まで8つの動作を図と動画で整理

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教室で「足踏みがずれてるよ」「胴造りをもう一度」と言われても、どれがどの動きのことなのか、すぐには結びつかない。審査の学科の問題を見たら「射法八節を順番に書いてください」とあって慌てた。そんな人も多いのではないでしょうか。

射法八節(しゃほうはっせつ)は、矢を一本射る動きを8つに区切った、弓道の基本の型です。

順番は足踏み→胴造り→弓構え→打起し→引分け→会→離れ→残心。8つは別々の動作ではなく、一続きの流れとして扱われます。

わたしは、(執筆時)まだ巻藁と的前を行き来している初心者で、射法を人に教えられる立場ではありません。ここに書くのは、公開されている資料などを読み比べてわかったことです。形の細かいところは、最後は教わっている先生に見てもらうのが確実です。

この記事は、全日本弓道連盟(全弓連)の公式サイトの解説、全弓連の先生方が執筆した中学校向けの指導書、スポーツ庁が公開している武道の教材動画の3つを突き合わせて整理しました。

この記事でわかること
  • 射法八節の読み方と、8つの順番
  • それぞれの節で何をするのか、形の目安
  • 始めたばかりの人がつまずきやすいところ
  • 学科で射法八節を順番に書くときの覚え方
目次

射法八節とは|一射を8つに分けた基本の型

「射法(しゃほう)」は、弓で矢を射るときの決まりごとのことです。その射法を、立つところから矢を放ったあとまで8つの段階に分けたものが射法八節です。全弓連は、弓を引く最初の一歩として、この8つを学ぶことを挙げています。

考え方の土台は、全弓連の『弓道教本 第一巻』にまとめられています。流派ごとに少しずつ違う引き方の、共通の基準として使われているものです。弓道とはどんな武道かという全体像は弓道とは?読み方・ルール・魅力を初心者向けに解説にまとめています。

読み方と8つの順番

順番節読みひとことで言うと
1足踏みあしぶみ的に向かって両足を開いて立つ
2胴造りどうづくり足の上に上体をまっすぐ乗せる
3弓構えゆがまえ弦に右手を掛け、左手で弓を握り、的を見る
4打起しうちおこし構えた弓矢を頭の上へ持ち上げる
5引分けひきわけ弓を左右に押し開きながら引き下ろす
6会かい引き切った状態で伸び合い、離れを待つ
7離れはなれ矢を放つ
8残心(残身)ざんしん放ったあとの形と気持ちを残す
射法八節の順番と、それぞれの節の役割

名前と順番だけなら、この表で足ります。ここから先は、それぞれの節で何をしているのかを一つずつ見ていきます。

8つは「一本の竹の節(ふし)」

全弓連の解説には、わかりやすいたとえがあります。一射を一本の竹とすると、射法八節はその竹にある8つの節(ふし)にあたる、というものです。

竹の節は一つひとつ別の節ですが、竹そのものは途中で切れずにつながっています。射法八節も同じで、8つに名前は付いていても、動作と動作の間で流れが途切れてはいけない、とされています。区切って覚えるのは、あくまで一続きの動きを確かめやすくするためです。

射法八節の流れ。構える(足踏み・胴造り・弓構え)、引く(打起し・引分け・会)、放って残す(離れ・残心)の3つのまとまり

射法八節のテーマは「一つの流れ」

全弓連は、8つの順番を覚えたら、呼吸に合わせて動き、初めから終わりまでを一つの流れにすることが大切だと説明しています。射法八節のテーマを一言で言うなら、この「一つの流れ」だと思います。

始めてみると、これがよくわかります。立ち方、腕の位置、手首、顔の向き、肩と、直すところがとにかく多い。しかも一つ直すと、別のところが崩れるんですよね。足踏みが少しずれると胴造りがずれ、その上に乗る全部がずれていく。8つが一本の竹だというのは、こういうことなんだろうなと感じています。

構える3つの節|足踏み・胴造り・弓構え

最初の3つは、弓を引き始める前の準備です。地味に見えますが、ここで決まった土台の上に、残りの5つが乗ります。

足踏み(あしぶみ)|的に向かって両足を開く

射位に立ち、的の方向に向かって両足を左右に踏み開く節です。全弓連の解説と中学校向けの指導書で、目安は一致しています。

  • 足を開く角度は約60度(外八文字)
  • 足を開く幅は、自分の矢束(やづか)が基準
  • 両足の親指の先を結んだ線が、的の中心と一直線になるように立つ

矢束は、自分が矢を引く長さのことで、腕の長さで決まります。踏み開き方には、左足を開いてから右足を一度で開く「一足」と、左右を半歩ずつ開く「二足」があります。どちらで教わるかは道場によるので、細かい足の運びは先生の形に合わせてください。

胴造り(どうづくり)|足の上に上体を正しく乗せる

足踏みで作った土台の上に、上体をまっすぐ乗せる節です。弓の下の端(本弭・もとはず)を左膝の上に置き、右手は右の腰に取ります。

このとき、足踏みの線・腰の線・肩の線の3本を平行にそろえるのが基本で、上から見たときの形を「三重十文字(さんじゅうじゅうもんじ)」と呼びます。全弓連の解説では、重心を体の中心に置き、弦と矢の向きを確かめて、気持ちを落ち着ける節とされています。

スポーツ庁「【弓道】11 射法八節②胴造り」

弓構え(ゆがまえ)|取懸け・手の内・物見の3つ

弓を引く直前の構えを作る節で、中身は3つに分かれます。

  • 取懸け(とりかけ):右手に着けたゆがけ(弽・かけ)を弦に掛ける
  • 手の内(てのうち):左手で弓の握りを整える
  • 物見(ものみ):顔を的に向け、的を見定める

全弓連の解説では、物見は両目で的の中心を静かにとらえること、両腕は大木を抱えるように軽く張ることとされています。手の内は弓道の中でもとくに奥が深いところなので、別の記事にまとめています(弓道の手の内|基本の作り方と図解・よくある失敗)。取懸けに使う道具はゆがけ(弽)とはで整理しています。

スポーツ庁の教材では、足踏みと弓構えにもそれぞれ動画があります(スポーツ庁「日本の武道を学ぼう」の弓道の動画一覧)。

引く3つの節|打起し・引分け・会

ここからが、弓を実際に引いていく節です。見た目にいちばん「弓道らしい」部分でもあります。

打起し(うちおこし)|弓矢を頭上へ持ち上げる

弓構えの形を崩さないまま、両方の拳を同じ高さで静かに持ち上げる節です。高さの目安は資料によって言い方が違い、全弓連の解説は「額よりやや上で、肩に響かない高さ」、中学校向けの指導書は「約45度」としています。

どちらにも共通しているのは、胸や肩に力を入れず、両拳の高さをそろえて上げることです。

引分け(ひきわけ)|左右均等に引き分ける

打ち起こした弓を、左右均等に押し開き、引き下ろしていく節です。途中で一度、大三(だいさん)という形を取ります。全弓連はこれを「押大目引三分一」という言葉で示しています。押す左手の側を大きく、引く右手の側は控えめに、という力の配分を表した言葉で、指導書では左に三分の二、右に三分の一と説明されています。

大三の形と、そこから会まで引き収めていく動きは、別の記事でくわしく扱います(弓道の会・引き分け・大三|射法八節の中盤を分解して理解する)。

スポーツ庁「【弓道】14 射法八節④打起し ⑤引分け」

会(かい)|引き切って、離れを待つ

引分けが完成した状態です。全弓連の解説では、心と体が一つになり、矢を放つ時機が熟すのを待つ節とされています。止まっているように見えますが、呼吸を詰めずに、上下左右へ伸び合い続けている状態だと説明されます。

形の目安としては、矢が口の高さで頬に付く(口割り・頬付け)、弦が胸に付く(胸弦)といった言葉がよく出てきます。スポーツ庁の動画も、自分の矢束まで引き込む・狙いをつける・頬付・胸弦をそろえるところを「詰合い」として説明しています。狙いの付け方は弓道の狙いの付け方|矢が前・後ろ・上下にずれるときの見直し方にまとめています。

会を何秒保つかは、資料によって書いてあったりなかったりします。ここでは数字を決めず、先生の指示に合わせるのがいいと思います。会に入るか入らないうちに離れてしまう「早気」のことは、弓道の早気(はやけ)とは|原因と直し方・もたれとの違いにまとめています。

放って残す2つの節|離れ・残心(残身)

離れ(はなれ)|伸び合いの先で矢を放つ

矢を放つ節です。全弓連の解説では、胸を広く開き、上下左右に伸び合って気力が満ちたところで放つ、とされています。指導書には、離れたあと両腕が左右一文字に開いた形が示されています。

読んでいて印象に残ったのは、全弓連の解説が離れを、会で上下左右に伸び合い、気力が満ちたところで起きるものとして書いていることです。離れが引っかかる、前に出てしまうといった悩みは、弓道の離れとは|引っかかる・前離れの原因と見直すところにまとめています。

残心(ざんしん)・残身|放ったあとも形を残す

矢が離れたあとも姿勢を崩さず、矢が当たったところ(矢所)を見る節です。そのあと気持ちをゆるめずに弓を倒し(弓倒し)、両拳を腰に戻して、顔を正面に戻します。

全弓連は、残心を射の総決算と位置づけています。放ったあとの形には、それまでの7つの節の結果がそのまま出る、ということだと思います。

余談ですが、「残心(残身)」のお作法・考え方は、わたしが昔やっていた抜刀にもあって全く同じです。刀で切った後の動作ですね。やはり武道はつながっているんだということを非常に興味深く感じます。

スポーツ庁「【弓道】15 射法八節⑥会 ⑦離れ ⑧残心(残身)」

ここまで読んで、名前と中身はなんとなくつながったでしょうか。ただ、わかったつもりでも、体はなかなかその通りに動いてくれません。先生に教わって頭でわかっていることと、体でできることは別で、その間がいちばん難しいところだとわたしは感じています。

始めたばかりの人がつまずきやすいところ

弓を持って横一列に並ぶ、袴姿の人たちの足元

資料や教室によって、細かい言い方が違う

資料を読み比べて最初に気づいたのは、同じ節でも言い方が少しずつ違うことでした。打起しの高さは「額よりやや上」と「約45度」、足踏みの手順は一足と二足、会の長さは書いてある資料と書いていない資料があります。

どれかが間違っているというより、同じ形を別の角度から説明しているものが多いように思います。迷ったら、教わっている先生の形を優先するのがいちばん確実です。ネットの解説(この記事も含めて)は、教わったことを整理するための備忘録くらいに使ってください。

正面打起しと斜面打起し

打起しには、体の正面で弓を構えて頭上へ持ち上げる正面打起しと、弓を左斜め前に構えて打ち起こす斜面打起しの2つのやり方があります。スポーツ庁の動画でも、打起しを正面・斜面の両方のやり方で見せています。

今は正面打起しで教える道場や学校が多いと言われますが、斜面打起しで引くところもあるそうです。周りの人と形が違って見えても、どちらかが間違いというわけではありません。この記事の各節の説明は、正面打起しを前提にしています。

名前を覚えるのと、できるのは別

射法八節の名前と順番は、その日のうちにでも覚えられます。でも、それぞれの節を形にするのには時間がかかります。始めたばかりの人が口をそろえて言うのも、頭ではわかっているのに体ができない段階が長い、ということです。

何度も失敗して試行錯誤しているうちに、ある日ふっとできるようになる。一度できると、その感覚を再現できるようになる。わたしはそのように思っています。教室では弓を持つ前に、徒手やゴム弓で射法八節の動きをなぞることが多いようです。家でできる練習は弓道の筋トレは必要?家でできるゴム弓練習と体幹メニューで整理する予定です。

射法八節のほかにも、稽古で使う言葉の読み方と意味は弓道用語集|稽古で聞く言葉の読み方と意味を場面別に整理にまとめています。

学科で射法八節を順に列挙するときの覚え方

無指定・初段の審査の学科では、射法八節を順番に書く問題と、八節から一つを選んで説明する問題が出ます。順番を覚えるなら、3つのまとまりに分けるのがおすすめです。

  • 構える:足踏み・胴造り・弓構え
  • 引く:打起し・引分け・会
  • 放って残す:離れ・残心

足元から順に形を組み立て、引いて、放つという流れになっているので、意味で覚えると忘れにくいはずです。1つでも書き漏れると不合格になる、と書き方の作法で示している連盟もあるので、最後に8つあるか数えるのが安心です。

もう一つ気をつけたいのが表記です。「打起し/打ち起こし」「引分け/引き分け」「残心/残身」のように、送り仮名や字が揺れます。自分の連盟の問題用紙や教本の表記に合わせておくと安心です。

一つを選んで説明する問題の組み立て方は、弓道審査の筆記(学科)の書き方|問題例と答案の組み立て方で整理しています。答案の土台になるのは、やはり教本です。

弓道教本 第一巻(全日本弓道連盟)

射法八節の考え方がまとまった基本の一冊で、学科の答案づくりにも使えます。全弓連の公式サイトからも購入できます。

射法八節についてよくある質問

Q. 射法八節の読み方は?

「しゃほうはっせつ」と読みます。各節は、足踏み(あしぶみ)、胴造り(どうづくり)、弓構え(ゆがまえ)、打起し(うちおこし)、引分け(ひきわけ)、会(かい)、離れ(はなれ)、残心(ざんしん)です。

Q. 「残心」と「残身」はどちらが正しい?

全弓連の解説もスポーツ庁の動画も「残心(残身)」と並べて書いていて、どちらかが間違いというわけではありません。スポーツ庁の動画では、矢所を見定めて形を残すことを「残身」、自分の射を振り返ることを「残心」と分けて説明しています。学科で書くときは、自分の連盟の表記に合わせてください。

Q. 体配とは違うもの?

違うものです。射法八節は一本の矢を射る動作の型、体配(たいはい)は射場への入場から退場までの立ち居振る舞い全体の作法です。審査では両方が見られます。体配については弓道の体配とは|入場から退場までの流れと座射・立射にまとめています。

Q. 射法八節は家でも練習できる?

弓や矢を使わない徒手や、ゴム弓での練習なら、家でも動きの順番を確かめられます。全弓連も、ゴム弓は上級者が射法八節の流れやフォームを確かめるのにも使う、と紹介しています。ただ、形の細かいところは自分では気づきにくいので、教室で見てもらいながら進めるのがいいと思います。

まとめ|8つの名前と順番を覚えたら、あとは一続きで

  • 射法八節は、一射を8つに分けた基本の型。足踏み→胴造り→弓構え→打起し→引分け→会→離れ→残心
  • 8つは「一本の竹の節」。区切って覚えても、動きは一続き
  • 資料や道場で細かい言い方は違う。迷ったら教わっている先生の形を優先

名前を覚えるのは一日でできても、一本の竹のように通して引けるようになるのは、きっとずっと先です。わたしもまだ、一つ直しては別のところを崩している最中です。それでも、名前と意味がわかっていれば、教室で言われたことも頭に入りやすくなるはずです。

弓道教本 第一巻(全日本弓道連盟)

射法八節の基準がまとまった一冊です。教室で教わったことを確かめる手元の資料として。全弓連の公式サイトからも購入できます。

公式の解説そのものを読みたい人は、全弓連「射法について」と、指導書の射法八節図解(日本武道館・PDF)も見てみてください。次は弓道の会・引き分け・大三で、射法八節の中盤をもう一段くわしく見ていきます。

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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