和弓とは|長さ221cmの理由・構造・種類と洋弓との違い

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東京で電車に乗っていると、自分の背丈より長い弓を抱えた学生をときどき見かけます。弓道を始める前から、天井にぶつかりそうなあの長さはずっと気になっていました。

和弓とは弓道で使う日本の弓で、全長は約221cm(七尺三寸)が基準。上が長く下が短い形をしていて、下から約3分の1のところを握ります。いまの弓道では、昔ながらの竹弓のほかに、グラスファイバーやカーボンを使った弓が広く使われています。

わたしは教室で弓を借りて稽古していて、自分の弓はまだ持っていません。いずれ買う日のために、まず「和弓とはどんな弓なのか」を調べて整理しました。形や部位の名前を知っておくと、教室で飛び交う言葉もぐっと分かりやすくなります。

この記事でわかること
  • 和弓の形と各部の名前、上が長く下が短い理由
  • 並寸・伸寸など、和弓の長さの種類
  • 竹弓・グラス弓・カーボン弓の違いと、和弓の歩み
  • 和弓の威力と射程について、確かめられること
目次

和弓とは|弓道で使う日本の長弓

「和弓(わきゅう)」は、アーチェリーで使う洋弓に対して、日本の弓を指す呼び方です。弓道や、流派に伝わる弓術で使われています。道場ではわざわざ「和弓」とは言わず、ただ「弓」と呼ぶのがふつうです。

特徴は大きく3つあります。

  1. 長い:基準の長さは約221cm。大人の身長よりずっと長い
  2. 上が長く、下が短い:握る位置が真ん中ではなく、下から約3分の1のところにある
  3. 矢を弓の右側につがえる:左手で弓を持ち、右手で弦を引く

弓の右側に矢をつがえるので、そのまま放つと矢は右へそれやすくなります。それを、弓を握る左手の使い方(手の内)でまっすぐ飛ばすのが、弓道の技術の大事なところです。放ったあとに弓が手の中でくるりと回る「弓返り(ゆがえり)」も、この手の内から生まれます。射る動作の全体は射法八節とはで整理しました。

もうひとつ意外と知られていないことかもしれませんが、和弓には照準器も目印も付けないのが特徴です。全日本弓道連盟(以下、全弓連)の案内でも、照準のための装置や目印を付けてはならないとされています。狙いは、弓と的の重なり方を見て、自分の体の位置で合わせます。

弓道を始めてから、弓を「操作する」というより、弓に合わせて自分の身体をどう置くかを考えるようになりました。長くて形の決まった弓だからこそ、合わせるのは人のほう。和弓の形を知ると、その理由が少し分かります。

和弓の構造|各部の名前と「上長下短」の形

各部の名前

教室でよく聞く部位の名前を、上から順に並べます。

和弓の各部の名前。上から末弭、弦と中仕掛け、矢摺籐、握り、本弭。握りは下から約3分の1の位置
名前(読み)場所と役割
末弭(うらはず)弓のいちばん上の端。弦の輪を掛ける
弦(つる)末弭と本弭のあいだに張る糸。合成繊維の弦と麻の弦がある
中仕掛け(なかじかけ)弦の、矢をつがえるあたりを太く補強した部分
矢摺籐(やずりとう)握りのすぐ上に巻いた籐。放った矢がこすれる場所
握り(にぎり)左手で握る部分。握り革を巻く
本弭(もとはず)弓のいちばん下の端。弦のもう一方の輪を掛ける
和弓の主な部位

弦の種類や交換は弓道の弦の種類とおすすめ|合成弦・麻弦の違いと交換時期にまとめています。握り革の選び方や巻き方は弓道の握り革の巻き方と交換時期|おすすめの革とあんこにまとめています。

弓に弦を張ったとき、横から見た弓の形は「成り(なり)」と呼ばれます。和弓は上と下で反り方が違い、この独特の曲線も和弓の特徴です。

なぜ上が長く、下が短いのか

和弓のいちばんの特徴が、この「上長下短(じょうちょうかたん)」です。世界の弓の多くは真ん中を握るので、下寄りを握る和弓はかなり珍しい形です。

ただ、なぜこの形になったのかは、はっきりとは分かっていないそうです。よく挙げられる説は次のようなものです。

  • 素材の性質から:一本の木で弓を作っていた時代、木の根元側と先のほうでしなり方が違うため、上下のしなりをそろえようとして握る位置が下に寄った
  • 扱いやすさから:しゃがんで射る、馬上で射るといった場面で、下が長いと地面や馬に当たるので、下を短くした
  • 振動が少ない位置を握るため:握りの位置が弓の振動の「節」にあたり、放ったあとに手に響く振動が少ない

このうち馬上の説には、上長下短の弓は馬が広まる前からあった、という反論もあります。どれか一つが正解というより、いくつかの理由が重なって、長い年月をかけてこの形に落ち着いたと考えるのが自然だと思います。

和弓の長さ|並寸221cmと伸寸・寸詰

和弓の長さは七尺三寸(約221cm)が基準で、これを「並寸(なみすん)」と呼びます。全弓連の案内では、射手の身長や競技の種類によって、多少長いもの・短いものも認められています。

呼び名尺寸全長
三寸詰(さんずんづめ)七尺約212cm
並寸(なみすん)七尺三寸約221cm
二寸伸(にすんのび)七尺五寸約227cm
四寸伸(よんすんのび)七尺七寸約233cm
和弓の主な長さ

二寸伸は「伸寸(のびすん)」とも呼ばれます。全日本弓道具協会の目安では、身長170cmくらいまでが並寸、それより高い人が伸寸です。実際には、矢をどこまで引くかの長さ(矢束)も合わせて決めます。

アーチェリーの弓(リカーブ)が約165〜180cmなので、並寸の和弓はそれより40cm以上長いことになります。世界の弓の中でも、かなり長い部類です。

自分の弓の長さをどう決めるかは、弓道の弓の値段と種類で矢束の測り方と一緒にまとめています。

和弓の種類|竹弓・グラス弓・カーボン弓

いまの弓道の弓は大きく3種類

いま弓道で使われている和弓は、素材で分けると竹弓・グラス弓・カーボン弓の3つです。

竹弓は、竹と木を貼り合わせて作る昔ながらの弓です。すべて天然の素材なので、季節や湿気で弓の調子が変わり、手入れに手間がかかります。

グラス弓は、木を芯にしてグラスファイバーを貼り合わせた弓です。丈夫で形が変わりにくく、比較的安いので、学生や初心者に広く使われています。カーボン弓はカーボンファイバーを使った弓で、グラス弓より値段が上がります。高専の研究紀要でも、競技で使われる弓の大部分はグラスやカーボンの合成弓だとされています。

素材は違っても、長さも上長下短の形も竹弓と同じです。グラス弓やカーボン弓は、竹弓の形を新しい素材で写した弓だと考えると分かりやすいと思います。

竹弓の作り

竹弓は、真竹と、ハゼノキなどの木を何層にも貼り合わせた「複合弓」です。いまの竹弓は、細く割った竹(ひご)を芯に並べ、その両側を木で挟み、外側と内側を竹で覆う「弓胎弓(ひごゆみ)」の作りが受け継がれています。

竹弓を作る職人は「弓師(ゆみし)」と呼ばれます。素材を選び、貼り合わせ、成りを整えるまで手作業で、同じ銘でも一張ごとに違う弓になります。

なお、「和弓 種類」で調べると、半弓(はんきゅう)など弓道では使わない短い弓の話も出てきます。弓道で使うのは長い弓(大弓)で、半弓のような短い弓は弓術の体験施設などで使われるもの、と分けて考えておけば迷いません。

和弓の歴史|丸木弓から竹弓、グラス弓へ

弓立てに並んだ弓道の弓(和弓)

和弓は、はじめから竹で作られていたわけではありません。作りの変化を順に追うと、こうなります。

  • 丸木弓(まるきゆみ):縄文時代から。一本の木を削った弓
  • 伏竹弓(ふせだけゆみ):平安時代の中ごろから。木の外側に竹を貼った
  • 三枚打弓(さんまいうちゆみ):平安時代の終わりから鎌倉時代のはじめごろ。内側にも竹を貼った
  • 四方竹弓(しほうちくゆみ):室町時代ごろ。木の芯の側面にも竹を貼った
  • 弓胎弓(ひごゆみ):戦国時代の終わりごろまでに。竹ひごを芯にした、いまの竹弓の作り
  • グラス弓:昭和40年代(1960年代後半)から。のちにカーボンを使った弓も加わった
和弓の作りの変化。丸木弓(縄文時代〜)、伏竹弓(平安中ごろ〜)、三枚打弓(平安末〜鎌倉初め)、四方竹弓(室町ごろ)、弓胎弓(戦国の終わりごろまでに)、グラス弓(昭和40年代〜)

木一本から、竹と木を重ねる作りへ。重ねる層が増えるほど、弓は強く、反発がよくなっていきました。そして戦後、昭和40年代に新しい素材が加わり、手入れが楽で値段も手ごろなグラス弓が、弓道を始める人の入り口を広げました。

武士の弓術が、いまの弓道になるまでの流れは、弓道の歴史と流派にまとめています。

和弓の威力と射程|よく見る数字はどこまで確かか

「和弓の威力」「和弓の射程」で調べると、驚くような数字がたくさん出てきます。ここでは、出どころがはっきりしている数字だけを拾います。

弓道で射る距離は28mと60m

いまの弓道の試合で射る距離は、近的(きんてき)が28m、遠的(えんてき)が60mです。ふだんの稽古は、ほとんどが28mの近的。それでも直径36cmの的はずいぶん小さく、なかなか当たりません。距離や的の決まりは弓道のルールにまとめています。

遠くへ射た記録|三十三間堂の通し矢

和弓で遠くまで射た記録として有名なのが、江戸時代に京都の三十三間堂で行われた「通し矢」です。長さ約120mのお堂の軒下を、端から端まで射通すもので、天井に当たらないように低く速い矢を射る必要がありました。

なかでも、一昼夜で射通した本数を競う「大矢数(おおやかず)」では、1686年に和佐大八郎(わさ だいはちろう)が8,133本を射通したと伝わっています。いまも三十三間堂では毎年1月に弓道の大会が開かれていて「通し矢」とも呼ばれますが、こちらは60mの遠的で、江戸時代の通し矢とは別のものです。

「射程400m」「鎧を貫く」は本当?

ネットでは、和弓の射程や威力について大きな数字をよく見かけます。ただ、調べた範囲では、どの弓で、どんな矢で、どう測ったのかまで示しているものはほとんどありませんでした。

実際、矢がどこまで飛ぶか、どれだけ深く刺さるかは、弓の強さ、矢の重さ、射る角度、射る人で大きく変わります。威力を比べた実験もいくつか紹介されていますが、条件がそれぞれ違うので、「和弓の射程は◯m」と一つの数字で言えるものではない、というのが調べてみての結論です。

ひとつ確かなのは、和弓は人に大けがをさせられる力を持った道具だということです。弓道場の外で矢を射ないこと、矢をつがえた弓を人に向けないことは、弓道のいちばん基本の約束です。

和弓と洋弓の違い(かんたんに)

アーチェリーの弓(洋弓)との違いを、3つだけ挙げておきます。

  • 長さと形:和弓は約221cmで上下非対称。洋弓(リカーブ)は約165〜180cmで上下対称
  • 矢をつがえる側:和弓は弓の右側、洋弓は左側(どちらも左手で弓を持つ場合)
  • 照準器:和弓は付けない。洋弓はサイト(照準器)などを付けられる

弦の引き方や、どちらが難しいかといった比較は、弓道とアーチェリーの違いで詳しく比べています。

和弓の値段の目安と、買う前に知っておきたいこと

和弓の値段は、素材でおおよそ決まります。弓具店の通販サイトの掲載価格を見ると、グラス弓が約3万〜5万円台、カーボン弓が約6万円から、竹弓は約8万円からが目安です(2026年10月時点)。弓は大きな荷物なので、通販では送料が別にかかり、その額は店によってかなり違います。

とはいえ、弓は最初に買う道具ではありません。教室や部活では弓を借りられることが多く、自分の弓を買うのは弓道着・ゆがけ(弽・かけ)・矢のあとでかまいません。長さと強さを先生と相談してから選ぶのが、合わない弓を買わないいちばんの近道です。素材ごとの違いと選び方は弓道の弓の値段と種類に、道具全体の費用は弓道にかかる費用にまとめました。

初めての弓向けのグラス弓「直心I」

翠山弓具店・楽天市場で並寸47,300円、二寸伸49,500円(2026年10月時点・送料別)。取り寄せになることがあるので、納期は商品ページで確認してください。長さと強さは、先生に確認してから注文を。

和弓についてよくある質問

Q. 和弓を持っていると銃刀法違反になりますか?

なりません。銃刀法で原則として所持が禁じられているのは、銃砲・刀剣類と、2022年に加わったクロスボウ(引いた弦を固定し、その固定を外して矢を放つ仕組みの弓)です。手で弦を引いて放つ和弓は、どれにも当たりません。持ち運ぶときは弓袋や弓巻に入れるのが一般的です。運び方は弓道の弓の持ち運び方|弓袋の選び方・電車のルール・保管にまとめています。

Q. 弓道の弓と和弓は同じものですか?

同じものです。弓道で使う弓が和弓で、道場ではただ「弓」と呼びます。弓術の体験施設などでは、弓道とは長さの違う短い弓を使うこともあります。

Q. 左利き用の和弓はありますか?

弓道では、利き手に関係なく左手で弓を持ち、右手で弦を引きます。左利きの人も同じ弓を使います。左利きの人の始め方は左利きでも弓道はできる?にまとめています。

Q. 和弓は自分で作れますか?

竹弓は弓師が手作業で作るもので、素材の選び方から貼り合わせ、成りの調整まで専門の技術が要ります。弓道で使う弓は、弓具店で買うか、教室・部活で借りるのがふつうです。

まとめ|長い弓には、長い歴史と理由がある

和弓は、全長約221cm、上が長く下が短く、下から約3分の1を握る日本の弓です。素材は竹・グラス・カーボンの3つで、いまは手入れの楽なグラス弓が入り口になっています。上長下短の理由ははっきりしていませんが、丸木弓から竹弓へと形を変えながら、千年以上かけていまの姿になりました。

電車で見かけるあの長い弓にも、それだけの理由と歴史が詰まっています。わたしも、いつか自分の弓を選ぶ日が来たら、この形の意味を思い出しながら選ぼうと思います。

弓を選ぶときの具体的な話は弓道の弓の値段と種類、ほかの道具は弓道の道具一覧や弓道の矢の種類と値段にまとめています。弓道そのものを知りたい人は弓道とはからどうぞ。

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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