弓道のかけ(ゆがけ)の付け方・紐の結び方と手入れの基本

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ゆがけ(弽・かけ)を初めて着けたとき、右手が自分の手ではないような違和感がありました。外したあとも手がぐったり疲れていて、しばらく慣れなかったのを覚えています。

しかも、手首に巻く紐の結び方は、聞く人によって少しずつ違います。先輩のやり方と動画のやり方が違って、どれが正しいのか迷う人も多いのではないでしょうか。

わたしはいま教室でゆがけを借りていて、自分のものを持つのはこれからです。その前に、スポーツ庁が公開している武道の教材動画と、弓具店・製作所の説明を読み比べて、付け方と手入れの基本を整理しました。

先に結論です。下がけを着けてからゆがけに指を入れ、紐は手首が動くくらいのゆるさで巻く。使ったあとは陰干しして、ぎり粉を払ってから布で包んでしまう。紐の結び方は教わる場所によって違うので、教わったやり方で大丈夫です。

この記事でわかること
  • ゆがけの付け方の手順(スポーツ庁の動画つき)
  • かけ紐の結び方と、締め具合の目安
  • 使ったあとの手入れ(陰干し・ぎり粉の落とし方)
  • しまい方とかけ袋の種類・値段、紐が傷んだときの交換
目次

ゆがけを付ける前に|紐の名前と下がけ

紫のかけ紐(緒)をほどいた状態の三つがけのゆがけ

手首に巻くのは「緒」と「小紐」の2本

ゆがけの手首まわりには、2本の紐が付いています。幅が広くて長いほうが緒(お)で、「帯」「大紐」と呼ばれることもあります。もう1本の細くて短いほうが小紐(こひも)です。ふだん「かけ紐」と呼ばれているのは、たいてい幅の広い緒のほうです。

小紐の端は輪になっていて、緒はそこに組み合わさっているだけ。縫い付けられているわけではありません。この作りが、あとで出てくる「紐は自分で交換できる」につながります。親指を覆う帽子や、手首側の控えといったほかの部位の名前は、ゆがけ(弽)とは|三つがけ・四つがけの違いと値段・選び方にまとめています。

先に下がけを着ける

ゆがけは素手にはめません。先に下がけという薄い手袋(多くは木綿)を着けて、汗と湿気を下がけに吸わせます。鹿革のゆがけは水分が苦手なので、ここがゆがけを長持ちさせるいちばんの基本です。

汗で湿った下がけのまま着けると、その湿気がゆがけに移ってしまいます。下がけの選び方と洗い方は弓道の下がけとは|役割・素材・洗い方とおすすめにまとめています。

ゆがけの付け方(挿し方)の手順

付け方は、スポーツ庁の教材動画「弓を射る前の準備」に「弽のつけ方」の章があり、手元のアップで順を追って見せています。動画の説明にそって並べると、次の6つです。

  1. 下がけを着ける:湿気と汗を防ぐため
  2. 3本の指をゆがけに入れる:親指・人差し指・中指(三つがけの場合)
  3. 取懸けの形を作る:人差し指と中指を親指の上にのせる
  4. 小紐を左に軽く引っ張る
  5. 小紐と緒を手首に巻く:手首が自由に動くよう、ゆるく巻きつける
  6. 緒の端を、巻いてある緒に通して締め具合を整える:最後に端を整える

動画では、ゆがけは座って付けるのが礼儀作法だと説明しています。道場で着けるときは、立ったままではなく座って、が基本と覚えておくとよさそうです。

ポイントは、紐を巻く前に取懸けの形を作っておくところです。弓具店がゆがけのサイズを確かめるときも、紐を巻いて取懸けの形にした状態で、親指の先が奥から少し浮いているかを見ています。弓を引くときの手の形で着けておく、ということですね。

動画で確かめる

文字だけでは紐の回し方がつかみにくいので、動画を置いておきます。3分21秒あたりからが付け方の章で、1分ほどで見られます。その前の部分では、弦輪の作り方・弓の張り方・中仕掛けの作り方も見られます。

スポーツ庁「【弓道】20 弓を射る前の準備」

かけ紐の結び方と締め具合

紫のかけ紐を手首に巻いたゆがけで、矢を番える手元

結び方は人によって違う。教わったやり方でいい

かけ紐の巻き方・結び方は、道場や先生によって少しずつ違います。どれかが間違い、というより、教わる場所のやり方の違いと考えてよさそうです。

なので、教室や部で教わったやり方があるなら、それに合わせるのがいちばんです。教わる前に自分で覚えたいなら、上のスポーツ庁の動画の巻き方がひとつの基準になると思います。

きつく締めない。手首が動くくらいに

やり方が違っても、締め具合については同じ方向の説明が見つかりました。スポーツ庁の動画は「手首が自由に動くよう、ゆるく巻きつける」、弓具店も「手首の可動域が確保できる程度に」と説明していて、どちらもきつく締めないほうをすすめています。

弓具店の説明によると、新しいゆがけは親指の部分が硬いので、紐をきつく締めると正しい取懸けができず、矢こぼれや暴発といった問題につながるそうです。しっかり固定したほうが安心な気がしますが、ここは逆なんですね。

巻き終わりは手の内側。クリップで留めない

もうひとつ、弓具店が注意しているのが紐の留め方です。教本に決まりがある部分ではないと断ったうえで、最後は手の内側で巻き終えること、そしてネクタイピンや金属のクリップで留めないことをすすめていました。クリップは、離れのときに外れて後ろに飛ぶと危ないから、という理由です。紐の端は、巻いた緒に通して納めておけば十分です。

外したあとの手入れ|乾かす・ぎり粉を払う

ゆがけを使ったあとの手入れの流れ。外す、陰干しで乾かす、ぎり粉を払う、布で包んでしまう。濡らさない、湿ったまま巻いてしまわない、ぎり粉をつけすぎない

まず陰干しで乾かす

ゆがけの手入れでいちばん大事なのは、汗の湿気を残さないことです。製作所は、稽古のあとの片付けやミーティングのような短い時間でも、風通しのよい場所で陰干しするようすすめています。湿ったまますぐにしまい込むと、カビが生えやすくなるそうです。

夏場は陰干しだけでは乾ききらないこともあります。弓具店の翠山は、そういうときはドライヤーで乾かすことも必要だとしていて、店でも修理で預かったゆがけが湿っていたらドライヤーで乾かしているそうです。

ぎり粉はつけすぎず、使ったら払い落とす

ぎり粉は、松やにを原料にした滑り止めの粉です。粘り気があるので、つけすぎると細かい汚れまでくっつけてしまいます。弓具店によると、使う量が多いとゆがけの革が黒ずみ、粉が重なりすぎてかえって滑りやすくなることもあるとのこと。

使うときは様子を見ながら少しずつ。稽古のあとは、柔らかいブラシで軽く払い落とすのが、製作所と弓具店に共通するすすめ方でした。ぎり粉や筆粉がどんな道具かは、弓道の中仕掛けの作り方|太さの目安と位置・道具のよくある質問でも触れています。

下がけは何枚かを交代で

製作所のすすめでは、下がけは数枚を代わる代わる使い、汗で湿ったものを使い続けないこと。下がけを白にしておくと汚れに早く気づける、と書いている弓具店もあります。わたしも下がけだけは自分のものを用意していて、ここは借りているゆがけを守るためにもできることだと思っています。

ときどき点検に出すのもひとつ

日々の手入れに加えて、製作所のなかには1,000本引くか、1年に一度ほどの点検をすすめているところもあります。革のしわやたるみを取ったり、弦の当たる部分を調整したりする作業で、使い込むうちに出てくる小さな傷みを早めに直せます。どこに出せばいいか分からなければ、買った弓具店に相談してみるとよさそうです。

しまい方とかけ袋の選び方

手ぬぐいや袱紗で包む

乾かしたゆがけは、通気性のよい布で包んでしまいます。弓具店の翠山は手ぬぐいをすすめていて、ゆがけの大きさとの相性もいいそうです。合切袋や袱紗(ふくさ)の袋も使えます。通気性のよい布がすすめられているので、湿気がこもる袋に湿ったまま入れるのは避けたいところです。

湿気取り(乾燥剤)を一緒に入れる人もいます。そのときは、革がしっかり乾いてから入れるのが前提です。湿ったまま袋に閉じ込めるのがいちばんよくないので、順番は「乾かす → 包む」です。

かけ袋の種類と値段

ゆがけ専用の入れ物は、「かけ袋」「ゆがけ入れ」などの名前で売られています。弓具店の通販に並んでいるものを種類ごとに分けると、こんな感じです。

種類特徴値段の目安
布の袱紗・巾着包む・紐で縛るタイプ。柄が多い900〜2,200円ほど
人工皮革の袱紗セーム革風のやわらかい生地で包む。洗えるものもある2,200円ほど
桐箱湿気を嫌う人向けの箱2,500〜3,300円ほど
筒・ケース型持ち手付きの筒や、形を保てるケース3,400〜3,850円ほど
弓具店の楽天市場店の掲載価格(2026年10月時点・税込・送料別)

最初の1つなら、布の袱紗で十分だと思います。手ぬぐいで包むのと考え方は同じで、値段も手ごろです。かけ袋は自分で縫って作る人もいます。

ゆがけを包む袱紗と、替えの下がけ

山武弓具店の柄物の袱紗(約30cm角・ポリエステル・柄が選べる)は1,760円、三ツ下カケ(白・綿100%)は1枚160円。どちらも送料別(2026年10月時点・楽天市場)。

かけ紐が傷んだら|紐は自分で交換できる

何年も使っていると、手首に巻く緒は毛羽立ったり、すり切れたりしてきます。製作所の説明によると、緒は縫い付けられているわけではないので、ゆがけの中で唯一、使う人が比較的かんたんに交換できる部分です。

外すときは、緒を細くたたみながら小紐の輪から押し出し、付けるときはその逆、という手順です。長年使ったゆがけはつなぎ目が固くなっていることもあるそうなので、無理に引っぱらないほうがよさそうです。手順は征矢弓具製作所のブログ「弽帯の交換法」に写真つきで載っています。

交換用のかけ紐は、人工皮革のものなら1,000円台〜2,000円台が多く、鹿革のものは1万円近くします(2026年10月時点)。ただ、控えの有無などで合う紐が違うことがあるので、買う前に弓具店に、自分のゆがけに合うか確かめてからにしてください。不安なら、交換ごと店にお願いするのが確実です。弓道具店の探し方もあわせてどうぞ。

ゆがけの付け方・手入れでよくある質問

Q. 教室で借りているゆがけも、同じように扱えばいい?

基本の扱いは同じですが、しまい方や返し方は教室や部のやり方に合わせてください。分からなければ先生に聞くのが確実です。借りている場合でも、下がけは自分で用意する(買う)ことが多いようです。

Q. ゆがけは洗えますか?

洗いません。製作所の実験では、鹿革そのものは水に濡れても極端には傷まなかった一方、ゆがけの部品をつなぐ接着剤に水に溶けるものがあるため、水濡れは厳禁とのことでした。カビの心配もあります。汗は下がけに吸わせて、下がけのほうを洗います。

Q. カビが生えてしまったら?

洗ったりせず、まず弓具店に相談してください。弓具店も、手入れの範囲を超える不具合は弓具店や修理店に、と案内しています。

Q. かけ紐の色に決まりはありますか?

段位などで色が決まっているという、全国共通の決まりは見当たりませんでした。最近は本体も紐もカラフルなものが売られていて、弓具店は「弓道衣を着たときに合う色を」とすすめています。気になるなら先生に聞いてみてください。

Q. 「かけほどき」とは何ですか?

紐をほどくことではなく、離れにかかわる射技の言葉です。細かな説明は資料によって違うので、ここでは紐の話ではない、とだけ押さえておけば十分です。離れについては弓道の離れとは|引っかかる・前離れの原因と見直すところにまとめています。

まとめ|締めすぎない、乾かして払って包む

ゆがけは、下がけを着けてから指を入れ、取懸けの形を作ってから紐を巻く。スポーツ庁の動画では、座って付けるのが作法とされています。紐の結び方は教わったやり方でよく、締め具合は手首が動くくらいにゆるく。巻き終わりは手の内側で、と弓具店はすすめています。

使ったあとは陰干しで乾かし、ぎり粉を払い、布で包んでしまう。紐が傷んだら交換できますが、合う紐は弓具店で確かめてから。まだ自分のゆがけを持っていないなら、選び方と値段はゆがけ(弽)とは、下がけは弓道の下がけとは、ほかの道具は弓道の道具一覧にまとめています。

手形で選んでもらえる三つがけ(堅帽子)

右手の手形を郵送すると、店が合うゆがけを選んで送ってくれます。山武弓具店「翔鳳 並」手形合わせ 24,800円(2026年10月時点・楽天市場・送料無料)。三つがけでよいかは、注文の前に先生に確認してください。

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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