弓道を始めたら「胸当ては用意しておいてください」と言われた。女性用の弓道着セットに入っていたけれど、どっちが上なのか分からないといった方もいるかもしれません。
胸当ては、主に女性が使用するものです。ですのでこの記事では、弓具店の説明や商品ページ、経験者の解説を読み比べて、共通しているところを整理してみました。
先に結論をざっくりと。胸当ては、矢を放ったあとに弦が胸に当たるのを防ぐ道具で、主に女性が着けます。値段は600円〜1,500円ほどで、最初は小さめの合皮かメッシュで十分だそうです。向きにはっきりした決まりは見当たりませんが、広いほうを右上にして、左下へ流す付け方が一般的です。
- 胸当ては何のためのもので、誰が着けるのか
- 合皮・メッシュなど種類ごとの値段と、大きさ・色の選び方
- 胸当ての向きと付け方、ゴムを紐に替える方法
- 男性は着けるのか、引っかかるときはどこを見直すか
弓道の胸当てとは|離れで弦が胸に当たるのを防ぐ道具
矢を放つ「離れ」の瞬間、弦は体の前を勢いよく戻っていきます。このとき弦が胸に触れると、痛いだけでなく、弦の通り道がずれて矢が狙いより下に落ちることがあります。胸当ては、胸の前に薄い当て布をして、弦が体に引っかからずに滑っていくようにするものです。
着けるのは主に女性です。女性用の弓道着セットには、たいてい胸当てが入っています。弓道着をこれから揃える人は、まずセットの中身を確かめてみてください(弓道着の選び方で、セットの中身と値段をまとめています)。男性については、あとの見出しで書きます。
形は、角の丸い三角形に近いものがほとんどです。3つの角に紐やゴムを通す穴があり、肩と脇の下を通して背中で留めます。
胸当ての種類と値段|最初は小さめの合皮かメッシュ
弓具店で売られている胸当ては、素材で分けるとだいたい次の4つです。
| 種類 | どんなものか | 値段の目安 |
|---|---|---|
| 合皮(ビニールレザー) | いちばん定番。黒が多い。汗は拭き取る | 600〜900円ほど |
| メッシュ | 網目の生地で、汗をかいてもこもりにくい | 1,000〜1,100円ほど |
| 透明 | 上衣(道着)の色を選ばない。扱う店は少なめ | 1,400円台 |
| ずれにくい形のもの | 形や留め方を工夫した、一部の店の商品 | 3,000円台〜 |
どれを選んでも大きな失敗はないようです。最初の1枚なら、小さめの合皮かメッシュで十分だと思います。セットに入っていた胸当てがあるなら、まずはそれを使ってみて、困ったら買い足すくらいでいいはずです。
大きさは「小さめ」を選ぶ
防具のような意味合いもあるので意外かもしれませんが、胸当ては大きければ安心、というものではありません。弓具店の説明では、胸全体や胴まで覆う必要はなく、弦が胸当てに引っかからない小さめのものが向いている、とされています。大きすぎると、胸当ての縁そのものに弦がかかってしまうからだそうです。
サイズは「標準」と「小」、または「M」と「S」の2つに分けて売っている店が多く、たとえばある弓具店の胸当ては、標準が幅約33cm、小型が幅約31cmです。体格に合わせて、迷ったら小さいほうから試すのがよさそうです。
色は黒か白。審査では上衣の色に合わせると無難
色は黒と白がほとんどです。稽古ではどちらでも困ることはありません。弓具店の説明では、審査では白い上衣には白、黒い着物には黒と、着ているものの色に合わせることがすすめられています。高校の大会では、胸当てに校名などを入れず無地にする決まりがあります。審査の服装まわりは弓道の審査とはにもまとめています。
ゴム付きか、紐付きか
留め具は、ゴムが付いているものと、綿の紐が付いているものがあります。ゴムは着け外しが楽ですが、使っているうちに伸びてゆるくなるようです。紐は結ぶ手間がかかるぶん、長さを自分の体に合わせやすいのが利点です。ゴムが伸びてきたら、紐に付け替えることもできます(やり方は下の付け方の見出しで)。
小さめの胸当て(合皮・メッシュ)
翠山弓具店の女性用 胸あて 合皮レザー Sサイズ(綿紐タイプ)990円/山武弓具店の胸当て メッシュ 小サイズ(黒・白)1,030円。どちらも送料別(2026年10月時点・楽天市場)。
胸当ての付け方|向きと紐の結び方
着けるのは、弓道着を着たあと・ゆがけの前
胸当ては、弓道着を着終えてから、上衣の上に着けます。ゆがけ(弽・かけ)を着ける前に済ませておくのが基本で、中学校の武道の指導書でも、正坐して胸当てを付けるときはゆがけより先に、とされていました。ゆがけを着けたあとだと、紐を結ぶのがかなりやりにくいはずです。弓道着の着る順番は弓道着・袴の着方、ゆがけについてはゆがけ(弽)とはにまとめています。
向きは「広いほうを右上に」が一般的
いちばん迷うのが向きだと思います。調べた範囲では、はっきりした決まりは見当たりませんでした。そのうえで、広いほうを右上に置き、左下に向かって流す付け方が一般的とされています。
ただ、道場や学校によっては逆の向きで教えているところもあるようです。弓具店の説明でも「向きが逆だと胸当ての意味をなさないことがある」と注意されています。大事なのは、弦が当たる場所をきちんと覆えていて、弦が縁に引っかからないことです。教わった向きがあれば、そちらに合わせてください。
胸当ての付け方の手順
紐の形は胸当てによって少し違いますが、2つの穴を結ぶ紐と、残りの1つの穴から出てそこにつながる紐で、Y字に近い形になっているものが多いです。
- 広いほうを右上にして、胸の前に当てる
- 上の角から出ている紐を肩にかけ、背中へ回す
- 下の角の紐を脇の下から背中へ回し、背中でつなぐ(ゴムの場合は、紐の輪に腕を通して背中へ回すだけのものもあります)
- 弓を構えたときに、弦が当たるあたりを胸当てが覆えているか確かめる。ゆるければ紐の長さを直す
紐をどちらの肩・脇に通すかは、胸当ての向きと一緒に決まります。初めて着けるときは、先生や先輩に一度見てもらうのがいちばん確実ですね。
ゴムが伸びたら紐に替える
ゴム付きの胸当てを長く使っていると、ゴムが伸びてずれやすくなります。そのときは、ゴムを外して紐に付け替える人が多いようです。
使うのは、太さ3〜5mmくらいの丸ひもです。綿でもポリエステルでもよく、手芸店や100円ショップで手に入ります。長さは体格によりますが、3mあれば足りるという説明がありました。
付け方は、穴が2つ並んでいる側の2つを1本の紐でつないで固定し、残りの1つの穴から出した紐を、その紐の途中につなぐ形が基本です。最初は長めに切って緩めに結び、実際に着けながら長さを詰めていきます。背中で蝶結びにするのが手間なら、紐の先にナスカン(引っかけるタイプの金具)を付けて、着け外しを楽にしている人もいます。

男性も胸当ては必要?
男性は着けない人がほとんどです。わたしも着けていません。ただ、体格や引き方によっては、男性でも弦が胸や上衣に当たることがあります。
気をつけたいのが高校の大会です。高体連の弓道の競技規則では、男子の胸当ての使用は認められていません(道着の下に着けることまでは咎めない、とされています)。弓道部の男子が胸当てを使いたいときは、顧問の先生に確かめてください。部活のことは弓道部とはにもまとめています。
大人の審査や一般の大会で、男性の胸当てを禁じる決まりは、調べた範囲では見つかりませんでした。それでも、弦が当たって痛い、上衣がこすれるというときは、まず先生に引き方を見てもらうのが先だと思います。弦が胸に当たるのは、引き方に原因があることもあるからです。それでも当たるなら、小さめの胸当てを試してみる、という順番がよさそうです。
胸当てが引っかかる・ずれるときは
胸当てを着けているのに弦が引っかかる、稽古の途中でずれてくる。集中力が削がれて困りますよね。そんなときは、次のところを見直してみると良いそうです。
| 困っていること | よくある原因 | 見直すところ |
|---|---|---|
| 弦が引っかかる | 胸当てが大きすぎる/向きが逆 | 小さめに替える。広いほうが右上になっているか確かめる |
| 稽古の途中でずれる | ゴムが伸びている/紐がゆるい | 紐に付け替える。射の合間に位置を直す |
| それでも胸に当たる | 弦が当たる場所を覆えていない/引き方 | 着ける位置を確かめる。先生に引き方を見てもらう |
ずれにくさを売りにした、形や留め方を工夫した胸当ても一部の店で売られています。値段は3,000円台からと定番品より高めなので、定番品で困ってからでも遅くないと思います。
よくある質問
Q. 胸当ては上衣の上に着けますか?中に着けますか?
ふつうは上衣の上から着けます。
Q. 審査や試合で、胸当ての色に決まりはありますか?
色そのものの決まりは、調べた範囲では見当たりませんでした。審査では上衣の色に合わせると無難です(白い上衣なら白)。高校の大会では、無地で校名などを入れないことが決められています。
Q. 胸当ては洗えますか?
素材によります。合皮は汗を固く絞った布で拭き取り、メッシュや「洗える」とうたっている胸当ては、商品の説明に従って手洗いするのが安心です。弓道着の洗い方は弓道着・袴のたたみ方と洗濯にまとめています。
Q. 紐は100円ショップのものでも大丈夫ですか?
太さ3〜5mmくらいの丸ひもなら、100円ショップのものを使っている人もいます。細すぎると食い込んで痛くなるので、ある程度の太さがあるものを選んでください。
まとめ|小さめを選び、弦が当たる場所を覆えているかで確かめる
胸当ては、離れで弦が胸に当たるのを防ぐ道具です。最初は600円〜1,100円ほどの、小さめの合皮かメッシュで十分。向きは広いほうを右上にするのが一般的ですが、教わった向きがあればそれに合わせ、弦が当たる場所を覆えているかで確かめます。
ゴムが伸びたら紐に替えれば、まだまだ使えます。男性は基本的に着けませんが、高校の大会では男子の胸当てが使えないことだけは覚えておいてください。
これから弓道着を一式揃えるなら、胸当てが入った女性用のセットから選ぶと、買い忘れがありません。
胸当て入りの弓道着セット
翠山弓具店の女性用6点セット(上衣・袴・足袋・帯・胸当て・専用バッグ)15,400円/男性用5点セット 14,740円。どちらも送料無料(2026年10月時点・楽天市場)。上衣と袴のサイズは商品ページのサイズ表で確認してください。
女性の上衣・袴のサイズの選び方は、女性の弓道着・袴の選び方|サイズ・インナー・男性用との違いにまとめています。弓道着の着方は弓道着・袴の着方|男女別の手順と帯の結び方もあわせてどうぞ。
