弓道の狙いの付け方|矢が前・後ろ・上下にずれるときの見直し方

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的前に立ってみると、矢が的の前に行ったり、後ろに行ったり。狙いはどこに付ければいいのか、ずれたら狙いを動かしていいのか。的前に立ち始めたころに、多くの人が迷うところのようです。

わたしも、思っていたよりまったく当たらない、というところから始まりました。姿勢や手の角度のほんのわずかなズレが、28m先の的に届くころには大きなズレになっている。弓道の難しさを、まずそこで知った気がします。

この記事は、全日本弓道連盟(全弓連)の解説や用語辞典、中学校向けの指導書などを読み比べてまとめてみました。もちろん習っている先生に見てもらい、先生のご指導に従うのが確実です。この記事は、知識や習ったことの整理に使っていただくのが良いかなと思います。

先に要点を書くと、狙いは会で、両目を開いたまま、矢先が的の中心につくように定めるものです。そして矢所がずれたときは、すぐに狙いを動かすのではなく、ずれた方向ごとに手の内・離れ・口割りの高さなどを先に見直す、という考え方が多く見られました。

この記事でわかること
  • 弓道の「狙い」とは何か、いつ・どう定めるのか
  • 中学校の指導書にある、狙いの付け方の手順
  • 満月・半月・闇など、弓と的の見え方の呼び名
  • 矢が前・後ろ・上・下にずれるときに、先に見直すところ
目次

弓道の「狙い」とは|会で、矢先を的の中心につける

狙いは「会」で定まる

弓道の狙い(ねらい)は、弓を引き切った会(かい)で、矢先を的に向けて定めることを指します。中学校の指導書では、引分けの説明の最後(引きおさめ)に「弦は軽く胸につき、矢は口の高さに水平につき、ねらいは的につく」とあり、会の評価の目安にも「ねらいは、的の中心に付いている」と書かれています。

ただ、会になってから急に的を探すわけではありません。全弓連の射法の解説では、弓構えで顔を的に向けるところ(物見)から、両眼で的の中心を静かに見ることが書かれています。的を見たまま打起し・引分けへと進み、会で狙いが定まる。そういう一続きの流れです。

指導書にも「ねらいについては、射の運行に沿って理解させる」という一文があります。狙いだけを切り離して覚えるものではない、ということなのだと思います。射法八節の流れは射法八節とは、会の中身は弓道の会・引き分け・大三とはにまとめています。

両目は開けたまま

鉄砲のように片目をつぶって狙うイメージがあるかもしれませんが、弓道では両目を開けたまま狙うのが基本です。指導書は「ねらいは、両目を開いたまま矢先が正しく的につくようにする」とし、全弓連の解説も、物見で両眼を使って的の中心を見ることを書いています。

矢所と、「前」「後ろ」の言い方

狙いの話でよく出てくるのが矢所(やどころ)。全弓連の用語辞典では、射られた矢が届いた着点のことです。

そして矢所を言うときの「前」「後ろ」。弓道では、射手から見て的の右側を「前」、左側を「後ろ」と呼ぶのが一般的です。射手は的に対して体の左側を向けて立つので、体の正面の側(的の右)が前、背中の側(的の左)が後ろ、と説明されることが多いようです。手前・奥のことではないので、最初は少し混乱するかもしれません。

弓道の矢所の向きの呼び方。射手から見て的の右側が前、左側が後ろ。上下はそのまま上と下

狙いの付け方|指導書の手順

中学校の指導書には、的前の練習に入る段階で「ねらいの付け方を学ぶ」という手順が載っています。弓の前に、まず指で練習するのがおもしろいところです。

2本の指で、的を透かして見る

左腕を伸ばして、左手の人差し指と中指を目の前に立て、的が指の向こうに透けて見える位置に合わせます。次に、指ではなく的のほうに目のピントを合わせて、指を通して的が見えるようにする。両目を開けているので、手前の指がぼやけて透けたように見える、という感覚をつかむ練習なのだと思います。

弓で的を隠してから、弓を通して見る

次は弓です。的のほうを向いて弓を持ち、いったん弓で的を隠します。そこから的に視点を合わせ、弓を通して的が見えるようにする。そのうえで、矢の先の延長線上が的の中心に来るように狙いをつける、という順番です。

中学校の指導書にある狙いの付け方の3ステップ。2本の指で的を透かして見る、弓で的を隠してから弓を通して見る、矢の先の延長線を的の中心に合わせる

自分では見えないので、見てもらう

指導書では、この練習のときに指導者がねらいを見ることになっています。会での矢の向きは、引いている本人からはわかりにくいからでしょう。経験者の解説でも、先生や仲間に矢の向きを見てもらって狙いを定める方法が紹介されています。

最初のうちは、狙いは自分で決めるより、見てもらって合わせるものと考えておくのがよさそうです。

巻藁の狙いは「中心より少し左」

的前の前に通る巻藁の練習にも、狙いの話が出てきます。指導書では、巻藁のねらい点は中心より少し左。理由として、弓手(ゆんで・左手)を押し切らないと矢は前に飛び、巻藁から外れる場合があるため、と書かれています。巻藁の練習全体は弓道の巻藁とは、押し切る離れのことは弓道の離れとはで整理しています。

満月・半月・闇|弓と的の見え方の呼び名

会で狙いをつけたとき、弓(矢摺籐)と的がどう重なって見えるかには、呼び名があります。

半月の狙い

全弓連の用語辞典に載っているのは「半月の狙い」です。的を矢摺籐(やずりどう・弓の握りの上に巻いた籐)の左側に付けて、的を半分に割るように狙うこと、とされています。

満月・闇(新月)は、経験者の間の呼び名

ほかに、経験者の解説でよく見かけるのが満月と闇です。満月は、的が矢摺籐の左側にまるごと見える狙い。闇は、的が弓に隠れて見えない狙いで、「新月」「有明」と呼ぶ人もいるようです。

呼び名的の見え方
満月的が矢摺籐の左側に、まるごと見える
半月矢摺籐の左側で、的が半分に割れて見える
闇(新月)的が弓に隠れて見えない
半月は全弓連の用語辞典、満月・闇は経験者の解説で多い説明をもとに整理。呼び方や細かな意味は人によって違う
満月・半月・闇の見え方の模式図。満月は的が矢摺籐の左側にまるごと見える、半月は籐の左端で的が半分に割れて見える、闇は的が弓に隠れて見えない

どの見え方が正しいかは、人によって違う

どれが正しい、という決まりがあるわけではないようです。経験者の解説では、手の内の働き方や体格、目によって、同じ狙いでも矢所が変わると説明されていることが多く、「この人は半月、この人は満月」と人によって違ってきます。

利き目が左の人は、右目が利き目の人と同じように狙っても見え方がずれることがある、とも書かれています。自分で「満月にしよう」と決めるより、先生に見てもらって合わせていくのがいいと思います。左利き・利き目のことは左利きでも弓道はできる?右で引く理由と利き目の注意にまとめています。

狙いの「高さ」は、口割りと矢先の向き

左右だけでなく、高さの狙いもあります。高さに関わるのが口割り(くちわり)で、会で矢が口の高さに水平につくことです。指導書には「会で矢は右頬に付き口の線(口割り)より下がらない」ようにという注意もあります。

口割りの高さが毎回変わると、矢先の向きも変わり、狙いの高さもそろいません。高さの狙いは、まず口割りを毎回同じところにそろえるところから、と考えておくとわかりやすいと思います。口割りのことは弓道の会・引き分け・大三とはでも触れています。

矢所が前・後ろ・上・下にずれるとき|狙いを動かす前に見直すところ

弓道の的に刺さった矢

矢所がいつも同じ方向にずれるとき、ネットではたくさんの原因が挙げられています。ただ、経験者によって挙げる原因の数も中身もかなり違い、同じ「前離れ」が、ある解説では矢が前に行く原因、別の解説では後ろに行く原因として出てくることもありました。

そこでこの記事では、主に複数の経験者の解説で共通して挙がっていたところだけを、方向ごとに表にしてみました。

ずれる方向先に見直すところくわしい記事
前(的の右)左手で押し切れているか・手の内が働いているか手の内/離れ
後ろ(的の左)手の内が効きすぎていないか・離れで左手を振っていないか・狙いが後ろについていないか手の内/離れ
下離れで緩んでいないか・左手が下がっていないか・口割りまで引けているか離れ/会
上狙いが高くないか・口割りの高さがいつもと違っていないか・離れで右手が下がっていないか会/離れ
あちこちに散る足踏み・胴造りを含め、毎回同じ形で引けているか射法八節
経験者の解説で共通して挙がっていたものを整理(前は指導書にも記述あり)。原因を決めつけるものではない

この表は、原因を決めつけるためのものではありません。先生に相談するときの材料くらいに使ってください。

前(右)に行くとき

前に行くときに、いちばん多く挙がっていたのが左手の押しと手の内です。指導書の巻藁の注意にも、弓手を押し切らないと矢は前に飛ぶ、という記述があり、経験者の解説でも、手の内(角見)が働いていないと矢所が前に行く、という説明が多く見られました。

また、始めたばかりのうちは矢が前に行きやすい、と書いている経験者も少なくありません。前に行くからといってすぐ狙いを後ろにずらすより、まず手の内を先生に見てもらうのがよさそうです。手の内の形は弓道の手の内にまとめています。

後ろ(左)に行くとき

後ろに行くときは、前とは逆に、手の内が効きすぎている、離れで左手を背中の方へ振っている、という説明が見られました。前に行くのを気にして左手を振る癖がつき、今度は後ろに行く、という話もあります。

もちろん、狙いそのものが的の後ろについているだけ、ということもあります。矢所がよくまとまって後ろに行っているなら、まずは狙いを先生に見てもらうのが早いかもしれません。

下に行くとき

下に行くとき、的の手前の地面を擦ってしまうとき(掃き矢)によく挙がるのが、離れで緩む(ゆるみ離れ)、離れで左手が下がる(切り下げ)、そして口割りまで引けていないことです。

離れの崩れ方の名前と意味は弓道の離れとはに表でまとめています。

上に行くとき

上に行くときは、まず狙いそのものが高くないか。そのうえで、会で矢が口割りより下がっていないか、離れで右手が下へ切れていないか、といった矢の筈(はず)の側が下がる動きが挙げられていることがありました。矢の後ろが下がれば、そのぶん矢先は上を向く、という理屈です。

まとまらず、あちこちに散るとき

矢所が一つの方向にまとまらず、あちこちに散るときは、手先より前に、足踏み・胴造りといった土台から、毎回同じ形で引けているかを見直すことになりそうです。

わたし自身、一つ直すと別のところが崩れる、ということの連続です。直すところが多いぶん、まとまらないのは始めたばかりのうちはある程度しかたない、とも思っています。

狙いで合わせる前に|形をそろえるのが先

狙いを動かすと、形のずれが見えなくなる

矢所がずれたら、狙いを反対側にずらせば当たるのでは、と考えたくなります。ただ、経験者の解説では射の癖があるなら、それを直すのが先、という考え方が多く見られました。狙いで合わせて当たってしまうと、形のずれがそのまま残り、どこを直せばいいのかが見えにくくなるからです。

一方で、癖はすぐには直らないので、直している間は矢所を見ながら仮の狙いを決めておく、という考え方もあります。どこまで狙いで合わせるかは、先生によって違いそうです。まず形を見直してから、狙いは先生と相談して決める、くらいが無難だと思います。

「中て弓」という言葉

全弓連の用語辞典には「中て弓(あてゆみ)」という言葉があります。的に中てることを主にして、基本を無視している弓引きのこと、とされています。当てたい気持ちは誰にでもあるものですが、当てることだけを追いかけないように、という戒めとして覚えておきたい言葉です。

抜刀をやっていたころも、腕の角度や速さ、向きの小さな差で、結果が大きく変わりました。弓道はその差が的に届くまでにさらに大きくなるぶん、狙いより先に形、という順番の意味がよくわかる気がします。

弓道の狙いのよくある質問

Q. 狙いは片目で付けてもいい?

指導書では、両目を開いたまま矢先を的につけるとされています。全弓連の解説でも、物見で両眼で的の中心を見ることが書かれています。まずは両目で的の中心を見る練習から始めるのがいいと思います。

Q. 利き目が左だと狙いはどうなる?

右目が利き目の人と同じ狙い方をしても、見え方がずれることがあるようです。どう合わせるかは人によって違うので、利き目が左だと先生に伝えて相談してみてください。左利きのことは左利きでも弓道はできる?にまとめています。

Q. 狙いは途中で変えていい?

自分の判断でこまめに動かすより、先生と相談して決めるのが安心です。形が変われば矢所も変わるので、形がそろってくると、合う狙いも変わってくることがあります。

Q. 的中率はどうやって計算する?

中った本数を、射た本数で割ります。的中の判定の決まりは弓道のルールと的までの距離にまとめています。

まとめ|狙いは会で定め、ずれたら形から見直す

弓道の狙いは、会で、両目を開いたまま矢先を的の中心につけるもの。付け方は、指で的を透かして見る練習から、弓を通して的を見る形へと進みます。見え方には満月・半月・闇といった呼び名がありますが、どれが合うかは人によって違います。

矢所がずれたときは、狙いを動かす前に、ずれた方向ごとに手の内・離れ・口割りを見直す。そして狙いは自分では見えないので、先生に見てもらう。初心者にできるのは、まずそこからかなと思います。射法の基準を手元で確かめたいなら、全弓連の教本が土台になります。

弓道教本 第一巻(全日本弓道連盟)

射法八節の基準がまとまった一冊です。教室で教わったことを確かめる手元の資料として。全弓連の公式サイトからも購入できます。

射法の各節や、関連することは次の記事でも整理しています。

弓道の会・引き分け・大三とは|形の目安と崩れやすいところ
弓道の離れとは|引っかかる・前離れの原因と見直すところ
弓道の手の内

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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