射法八節の名前は覚えたけれど、大三・引分け・会のあたりになると「何をそろえればいいのか」があいまいになる。そんな人は多いのではないでしょうか。
このあたりは、手の角度や肘の向きのわずかなズレが、的に届くころには大きなズレになるところです。始めたばかりのわたしも、一つ直すと別のところが崩れる、をくり返しています。
わたし自身はまだまだの身です。この記事は、全日本弓道連盟(全弓連)の解説、中学校向けの指導書、スポーツ庁が公開している弓道の動画などを読み比べてまとめてみました。もちろん習っている先生に見てもらい、先生のご指導に従うのが確実です。この記事は、知識や習ったことの整理に使っていただくのが良いかなと思います。
先に要点を書くと、大三(だいさん)は引分けの途中で一度とる形、引分けは弓を左右均等に押し開いて会まで引き収める動き、会(かい)は引き収めたところで形をそろえ、伸び合い続けながら離れの時機を待つところです。
会は止まっているように見えて、止まっていない。資料を読み比べていちばん印象に残ったのは、ここでした。
- 大三・引分け・会が、射法八節のどこにあたるか
- 大三の意味(押大目引三分一)と、大三で確かめるところ
- 引分けで「押し開く」と言われる理由と、崩れやすいところ
- 会の形の目安(口割り・頬付け・胸弦)と、詰合い・伸合い
- 会は何秒保てばいいのか
弓道の会・引き分け・大三とは|射法八節の5番目と6番目
会(かい)の読み方と、射法八節での位置
射法八節は、一射を「足踏み・胴造り・弓構え・打起し・引分け・会・離れ・残心(残身)」の8つに分けたものです。このうち引分けが5番目、会が6番目。会は「かい」と読みます。
大三は八節の一つには数えられていません。打起しのあと、引分けの途中で一度とる形で、引分けの中に含まれます。8つ全体の流れは射法八節とはにまとめています。

打起しで頭上に上げた弓を、大三で一度押し開き、そこから左右均等に引き分けて会に入る。会で伸び合い続けた先に離れがくる。この一続きが、この記事で扱う範囲です。
「弓道会」を探している人へ
「弓道 会」で検索すると、地域の弓道会や弓道連盟のサイトもたくさん出てきます。近くで弓道を習える会を探している人は、近くの弓道教室の探し方のほうが役に立つと思います。
大三とは|押大目引三分一と、大三で確かめるところ
大三(だいさん)の意味と「押大目引三分一」
全弓連の解説では、引分けは大三(押大目引三分一)をとって、左右均等に引き分け、会に至るものとされています。
「押大目引三分一」は、引分けでの力の配分を表した言葉です。中学校の指導書の用語説明では、押す左手の側に三分の二、引く右手の側に三分の一の配分とされています。弓を右手で引っ張るというより、左手で押し開く側が主になる、という考え方ですね。
スポーツ庁の動画では、大三には手の内を完成させることと、引き込みやすい体勢をつくることの2つの役割がある、と説明されていました。大三は、このあと会まで引き収めるための準備の形、と考えるとわかりやすいと思います。
大三で確かめるところ
同じ動画で「大三の構え」として挙げられていたのは、次の4つです。
- 左手で的の方向へ押し開く:大三は左手から動かしはじめる
- 弓が掌から離れないように回す:小指の第一関節が弓の外竹にかかるところで止める
- 右肩・右肘を後ろへ張る:弦に引っ張られて流されないようにする
- 矢と体を平行にする:額と右手のあいだは拳1〜2個分ほど空ける
2つ目の「弓を回す」ところで手の内が定まります。手の内の作り方は弓道の手の内で、確かめるところを図にしています。
位置の目安は、資料や先生で言い方が違う
大三で右手をどこに置くかは、中学校の指導書やスポーツ庁の動画では「拳1〜2個分」、経験者の解説では「拳一個〜一個半」のように、資料によって言い方が少しずつ違います。流派ごとの細かい目安を書いている解説もあります。
ここは数字を覚えるより、教わっている先生の形に合わせるのがいちばん確実だと思います。自分では見えない位置なので、先生に一度見てもらうのが早いです。
斜面打起しでは、引分けの進め方が少し違う
ここまでの大三は、体の正面で弓を構えて打ち起こす正面打起しの話です。弓を左斜め前に構える斜面打起しでは、弓構えの段階ですでに弓を押し開いているので、引分けの進め方が少し違います。
スポーツ庁の動画では、斜面打起しの引分けに一気に押し開くやり方と、押し開く途中で右手が眉の高さあたりにきたところで一度とどめる「3分の2をとる」やり方の2つが紹介されていました。どちらで引くかは、習っている先生の教え方に合わせるところです。
弓道の引き分け|「引く」より「左右均等に押し開く」
引分けで何をするか
引分けは、打ち起こした弓を、左右のバランスを保ちながら引き込んで、会まで引き収める動きです。中学校の指導書では、上体が曲がったりねじれたりしないで、弓を押し開いて左右均等に引き分けることが、できているかを確かめる目安として書かれています。
引き収めたところでは、縦(胸の中筋)と横(両肩)が十文字になる姿勢で、自分の矢束いっぱいまで引く、というのが指導書の説明です。矢束(やづか)は、スポーツ庁の動画では「のどの中心から左手の中指の先までの長さ」と説明されていました。
よく言われる「押し開く」の意味
引分けの説明では、「引く」より「押し開く」という言葉がよく出てきます。押大目引三分一のとおり、左手で押す側が主になるからです。
スポーツ庁の動画では、大三のあと弓と弦のあいだに体が割って入るようなイメージで押し開くと説明されていました。手先の力だけで引かず、胸を開きながら引き分ける、とも言っています。
引分けで崩れやすいところ
資料で「気をつけるところ」として挙げられていたのは、次のようなことです。
- 左手首の向き:引分けの途中で、左手首が内側に入りすぎたり、外側に開きすぎたりしない(スポーツ庁の動画)
- 弓と手の内:弓と手の内が滑らないように気をつける(スポーツ庁の動画)
- ゆがけと弦:ゆがけから弦が外れないよう、弦を外側に押しながら引き分ける(指導書)
- 上体:上体が曲がったりねじれたりしないで、左右均等に引き分ける(指導書)
動画で見ると、文章よりずっとわかりやすいです。正面打起しと斜面打起しの両方の引分けが入っています。
弓道の会とは|詰合いと伸合い
会は「止まる」ところではない
全弓連の解説では、会は引分けが完成し、心と体が一つになって、矢を放つ時機が熟すのを待つところとされています。呼吸は詰めない、とも書かれています。
形の上では止まって見えますが、スポーツ庁の動画では「会では、引き分けし続ける気持ちで弓と弦を押し引きする」と説明されていました。会は、引分けの続きなんですね。
同じ動画では、会を詰合い(つめあい)と伸合い(のびあい)の2つに分けて、伸合いが限界まで高まった瞬間を彀(やごろ)と呼び、そこで離れに入る、と説明しています。
詰合い|会の形をそろえる
スポーツ庁の動画では、詰合いとして次の4つが挙げられていて、4つを同時に行うのが理想とされていました。
- 自分の矢束まで弓矢を引き込む
- 狙いをつける
- 頬付け(ほおづけ):矢を頬につける
- 胸弦(むなづる):弦を胸につける
指導書の用語説明では、詰合いを、弓構えから会までのあいだ、手の内・左肘・左肩・右肩・右肘などの関節を正しく組み合わせて、筋骨が緩まないように締めること、としています。形をそろえて、緩みのない状態にするのが詰合い、と受け取っています。
会の形の目安としてよく出てくる言葉を、表にまとめてみました。
| 言葉 | 何がどうなるか |
|---|---|
| 口割り(くちわり) | 矢が右頬につき、口の高さで水平になる。口より上でもよいが、下がらない |
| 頬付け(ほおづけ) | 矢を頬につける。資料によっては口割りと一緒に書かれる |
| 胸弦(むなづる) | 弦が胸に軽くつく |
| 矢束いっぱい | 自分の矢束まで引き収めている |
| 縦横十文字 | 縦(胸の中筋)と横(両肩)が十文字になっている |
伸合い|そろえた形から伸び続ける
形がそろったら、そこから伸び続けるのが伸合いです。指導書は会で天地左右に伸び合うと書き、スポーツ庁の動画は伸合いを次の3つで説明していました。
- 角見(つのみ)の働きで、弓の右角を的の方へ押す力を高める
- 右手は、矢の延長線(矢筋)の後方へ弦を張り続ける
- これ以上強くできず、左右の均衡がとれる瞬間まで、粘り強く押し引きを続ける
上から見ると、両足の底・腰・両肩が1本に重なっていて、背骨と首筋(項)が上に伸びている。動画ではこれを三重十文字を保った状態として見せていました。
口割りが高い・付かないときに見直すところ
「口割りが高くなる」「頬に付かない」という悩みもよく見かけます。原因は人によって違い、一つには決められません。
中学校の指導書は、会ができているかの目安として「口割りまで矢束いっぱいに引いている」ことを挙げています。まずは自分の矢束まで引けているかが見直すところの一つです。そのほかは自分では見えないところなので、先生に見てもらうのが確実だと思います。
口割りは狙いとも結びついています。矢所が上下左右にずれる話は弓道の狙いの付け方|矢が前・後ろ・上下にずれるときの見直し方にまとめています。
会は何秒保つ?|決まりと目安
「会は何秒保てばいいの?」という疑問もよく見かけます。調べた範囲では、会を何秒保つという決まりは、全弓連の解説には見当たりませんでした。スポーツ庁の動画も、秒数には触れていません。
一方で、中学校の指導書には、会で「5秒程度」天地左右に伸び合うという目安が書かれています。中学生が弓道を学ぶときの目安として出てくる数字で、すべての人に当てはまる決まりではない、と受け取るのがいいと思います。ネットには「7秒」「5〜10秒」といった数字も見かけますが、出どころが書かれていないものもあります。
どの資料にも共通しているのは、会で伸び合いを続けることを大事にしている点です。会の長さは、先生の指示に合わせるのがいちばんです。
会を保とうとしても早く離れてしまう、という悩みは弓道の早気(はやけ)とはでまとめています。
大三から会までで崩れやすいところ・確かめ方
大三から会までの崩れは、ほかの節や悩みとつながっていることが多いです。どこを見直すかと、くわしい記事を表にしてみました。原因を決めつけるためではなく、先生に相談するときの材料として使ってください。
| 場面 | 起きやすいこと | 見直すところ | くわしい記事 |
|---|---|---|---|
| 大三 | 手の内が定まらない・弓が回りすぎる | 弓を回す量、小指のかかり方 | 手の内 |
| 大三 | 右手が弦に引っ張られる | 右肩・右肘を後ろへ張れているか | この記事の大三の節 |
| 引分けの途中 | 手先だけで引いている | 左右均等か、上体がねじれていないか | この記事の引分けの節 |
| 会 | 会に入るか入らないうちに離れてしまう | 伸合いが続いているか | 早気 |
| 会 | 口割りが高い・矢所がずれる | 矢束いっぱいまで引けているか | 狙いの付け方 |
| 会から離れ | 離れで緩む・前に出る | 伸合いの先で離れているか | 離れ |
家でできるのはゴム弓まで

大三から会までの形は、道場の外ではゴム弓で確かめることができます。素引きや巻藁は弓を使うので、道場で先生の目があるところで行います。家での練習の範囲は弓道の筋トレは必要?家でできるゴム弓練習と体幹メニュー、巻藁は弓道の巻藁とはにまとめています。
頭でわかることと、体でできることは別。抜刀をやっていたころにもよく感じたことで、大三から会のあたりは、まさにそれを感じるところだと思います。教わった形を家でなぞっておくと、道場で先生に見てもらうときに話が早いかもしれません。
家で形を確かめるならゴム弓
山武弓具店・楽天市場で、レビューの多い「座右弓」3,300円、ネコポスで送れる「必中弓」2,530円(2026年10月時点・送料別)。先生に見てもらった形を、家でなぞる用です。
弓道の会・引き分け・大三のよくある質問
Q. 会の読み方は?
「かい」と読みます。射法八節の6番目で、引分けのあと、離れの前にあたります。
Q. 学科で「会について説明しなさい」と出たら?
押さえておきたいのは、①引分けが完成した状態であること、②詰合い・伸合いで形をそろえて伸び合い続けること、③心と体が一つになって離れの時機を待つこと、の3つだと思います。答案の組み立て方は弓道審査の筆記(学科)の書き方で整理しています。
Q. 大三は射法八節に入っている?
八節の一つには数えられていません。引分けの途中でとる形で、全弓連の解説でも引分けの中で説明されています。
Q. 会がきつい・腕が震えるのは?
原因は人によって違い、ここでは決められません。弓の強さが体に合っているかどうかは、自分で決めず先生と相談するものです(弓道の弓の値段と種類)。痛みがあるときは無理をせず、先生に伝えてください。けがのことは弓道で多い怪我と予防|弦で打つ・肩肘の痛み・事故の防ぎ方にまとめています。
Q. 口割りと頬付けは同じ?
ほぼ一緒に使われる言葉です。中学校の指導書では、口割りを「会で矢が右頬につき、口の高さに水平になること」としていて、「頬付け(口割り)」のように一つにまとめて書いている箇所もあります。言葉の重心で言えば、口割りは矢の高さ、頬付けは矢が頬につくこと、くらいに覚えておくとわかりやすいと思います。
まとめ|大三で整え、引分けで押し開き、会で伸び続ける
大三は手の内を整えて押し開きはじめる形、引分けは左右均等に押し開いて会まで引き収める動き、会は詰合いで形をそろえ、伸合いを続けながら離れの時機を待つところです。
名前を覚えたら、次は一つずつの形より「止まらずにつながっているか」を意識すると、資料の説明がぐっと読みやすくなると思います。射法の基準を手元で確かめたいなら、全弓連の教本が土台になります。
射法八節の全体や、関連することは次の記事でも整理しています。
射法八節とは|足踏みから残心まで8つの動作を図と動画で整理
弓道の手の内|基本の作り方と図解・よくある失敗
弓道の早気(はやけ)とは|原因と直し方・もたれとの違い
