自分の弓を買ったら、2mを超えるあの弓を、どうやって道場まで運べばいいのか。電車に乗せていいのか、何に入れて、どう持てばいいのか。弓を選ぶより先に、そこが気になっている人もいると思います。
電車に乗っていると、細長い袋に入った弓を抱えた学生をよく見かけます。わたしはまだ教室の弓を借りているので、自分の弓を運んだことはありません。抜刀の教室に通っていたころは、刀を刀袋に入れてふつうに持ち歩いていましたが、刀は弓ほど長くないので、困った覚えはないんですよね。弓はそうはいかなさそうなので、いつか自分の弓を持つ日のために、先に調べておくことにしました。
結論から書くと、弓は弦を外して弓袋と弓巻で包み、下の端に石突を付けて、縦に持って運ぶのが基本です。電車は、JR東日本では袋に入れて車内で立てて持てるスポーツ用品なら長さが2mを超えても持ち込めますが、2mを超える荷物を持ち込めないと案内している会社もあり、混雑時は断られることもあります。乗る路線の案内は一度確かめておきましょう。自転車はすすめません。家では弦を外し、暑くなる場所に置かないことが大事です。
この記事は、鉄道会社の手回り品の規則、全日本学生弓道連盟の通知、弓具店の説明をもとに整理しました。
- 弓を運ぶときの包み方と持ち方の基本
- 弓巻・弓袋・雨袋・石突の違いと値段(2026年11月時点)
- 電車・バス・自転車・車・飛行機で運ぶときの注意
- 弓道部での運び方と、家で弓を保管するときの注意
弓を運ぶときの基本|包む・守る・縦に持つ
弓の長さは約2.2m。折りたためない
弓道の弓は、基準の長さ(並寸)が221cmあります。背の高い人が使う伸寸の弓は、さらに長くなります(四寸伸で233cmほど)。竹やグラス、カーボンを貼り合わせて作る一本の弓なので、たたんだり分けたりはできません。長さの決まりは和弓とはでまとめています。
つまり、弓を持って移動するときは、いつも2mを超える棒を1本持っているのと同じです。どう包むか、どう持つか、どの乗り物で行くかを先に決めておくと、当日あわてずにすみます。
弦を外し、弓袋と弓巻で包んで、石突を付ける
運ぶ前の包み方は、弓具店の説明でだいたい共通しています。流れは次のとおりです。
- 弓から弦を外す
- 弓を布の弓袋(内袋)に入れる
- 外した弦を、袋の上から弓に沿わせて巻きつける
- その上から弓巻を巻く(または外側の弓袋に入れる)
- 弓の下の端(本弭)に石突をかぶせる

弦を袋の上から巻くのは、弦に塗る「くすね」が弓に付かないようにするためだと、弓具店は説明しています。弓巻は、上から下へ弓を回しながら巻いていき、はじめのほうはきつめに巻くのがコツだそうです。
なお、弦を張ったまま弓巻を巻いて運ぶ場合は、弦を2本張っておくよう弓具店は案内しています。グラス弓・カーボン弓を使っている初心者のうちは、「外して包む」と覚えておけば大丈夫です。
持ち方は縦に、体の近くで
包んだ弓は、地面に対して縦に、体に寄せて持つのが基本です。横に持ったり肩にかついだりすると、前後の人や物に当たります。人が多い所や天井の低い所を通るときは、弓の上の端が体の前に来るように少し傾けて、目で見ながら動かすと安全です。
弓道の安全についてまとめたサイトでは、ほかにも「弓を持つときは急に動かない」「カバンは背負うかショルダー型にして、片手を空けておく」「エスカレーターにはなるべく乗らず、乗るなら上の端が人や天井に当たらないよう気をつける」「立てかけるときは倒れないようにする」といった注意を挙げています。弓は、ぶつけた相手にけがをさせることもある道具だと思って持つのがよさそうです。
弓巻・弓袋・雨袋の違いと選び方
弓を包む道具は、名前が似ていて最初はまぎらわしいです。役割で分けると、次のようになります。
| 道具 | どんなものか | 向く場面 | 値段の目安 |
|---|---|---|---|
| 布の弓袋(内袋) | 弓をすっぽり入れる細長い布の袋 | いちばん内側。保管にも | 約650〜1,700円 |
| 弓巻 | 弓にぐるぐる巻きつける帯状の布 | 内袋の上から巻いて運ぶ | 約1,800〜2,800円 |
| ビニールレザーの弓袋 | 合成皮革の袋。口はマジックテープ | 汚れ・小雨に強い外袋として | 約2,800〜3,000円 |
| ファスナー式の弓袋 | ファスナーで開け閉めする袋 | 出し入れをきちんとしたい人 | 約3,000〜4,700円 |
| 雨袋(雨用の弓袋) | 透明なビニールなどの袋 | 雨の日に一番外にかぶせる | 約450〜800円(合羽型は4,500円〜) |
| 石突(いしづき) | 弓の下の端にかぶせるカバー | 地面に当たる部分を守る | 約220〜990円 |
内袋と外袋。店によって呼び方が違う
ややこしいのは、店によって「弓袋」が指すものが違うことです。布の袋を「内袋」、その外にかぶせるビニールレザーの袋を「弓袋」と呼ぶ店もあれば、布の袋をそのまま「弓袋」と呼ぶ店もあります。買うときは、素材と「内袋かどうか」を見ておくと間違えません。
弓を買うと、布の袋が付いてくることが多いです。店によっては、内袋と外の弓袋の2枚が付いてきます(弓の値段と種類)。下の端を守る石突と袋が一体になった「石突付きの弓袋」もあります。
雨の日は雨袋を一番外に
ビニールレザーの弓袋は水をはじきますが、弓具店の商品説明では完全防水ではなく、雨袋の代わりにはならないとされています。雨の日は、透明なビニールの雨袋をいちばん外にかぶせます。数百円で買えるので、1枚カバンに入れておくと安心です。竹弓は特に、濡らさないように気をつけたいところです。
最初の1つは、付いてくる袋+外袋か雨袋
自分の弓を買ったら、まずは付いてくる布の袋と、石突を用意します。そのうえで、毎回の行き帰りで汚れや傷が気になるならビニールレザーの外袋か弓巻を、雨の日にも運ぶなら雨袋を足す、という順番で十分だと思います。弓巻は柄や色が豊富なので、好みで選ぶ楽しみもあります。
外袋にするビニールレザーの弓袋と、雨の日の雨袋
山武弓具店・楽天市場で、ビニールレザーの弓袋(全9色・四寸伸まで)3,030円、雨天用の弓袋(透明ビニール)440円(2026年11月時点・送料別)。ビニールレザーの弓袋は完全防水ではないので、雨の日は雨袋を重ねてください。
移動手段ごとの運び方|電車・バス・自転車・車
どの乗り物で運ぶかによって、気をつけることが変わります。先に全体を一覧にしておきます。

電車|JR東日本は「立てて持てる」なら乗れる。会社ごとに確認を
JR東日本の手回り品の案内では、車内に持ち込める荷物は、縦・横・高さの合計が250cm以内で、長さは2mまでです。ただしスポーツ用品や楽器などは、長さの制限を超えても、車内で立てて持てるものは持ち込めるとされていて、専用の袋やケースに入れるよう案内されています。JR東日本なら、弓はこの「スポーツ用品」として、袋に入れて立てて持てば乗れる、という読み方になります。
一方で、同じ案内には、列車が大変混雑している場合などは持ち込みを断ることがある、とも書かれています。また、この例外はどの会社にもあるわけではありません。東京メトロや東急のように、長さ2mを超える荷物は持ち込めないとだけ案内している会社もあります。弓を持って乗る路線は、手回り品の案内を前もって確かめておいてください。
乗るときの気づかいとしては、混雑する時間をできるだけ避ける、降りやすいドアの近くに立つ、網棚には載せない、乗り降りでドアをくぐるときに弓の先を人に当てない、といったところです。弓は電車の扉より長いので、乗り降りのときは少し斜めにします。
バス|長さ2mまでの会社もある。乗る前に確認を
バスは電車より天井が低く、乗降口も狭くなります。たとえば都営バスの手回り品の案内は「縦・横・高さの合計が250cm以内・長さ2m以内・重さ30kg以内」で、2.2mある弓はこの長さを超えます。都営バスの案内ではほかにも、片手で持てること、片手を空けておくことが求められています。弓を持ってバスに乗る予定があるときは、乗る前にバス会社に問い合わせておくのが確実です。
自転車|すすめない
自転車で弓を運ぶのは、すすめません。自転車に積める荷物の大きさは都道府県の規則で決まっていて、たとえば東京都の規則では、長さは「積載装置(荷台など)の長さに0.3mを加えたもの」まで、前後へのはみ出しは合わせて0.3mまで、高さは地面から2mまでです。2mを超える弓は、どう積んでもこの範囲に収まりません。
手に持ったまま、肩にかついだまま運転するのも、ハンドル操作のじゃまになって危険です。道場まで自転車で通いたい人は、弓を道場に置かせてもらえるかを所属先に相談するほうが現実的かもしれません。
車|前後の座席にまたがって置く。夏は置きっぱなしにしない
車は、弓を持ち運ぶ方法としてはいちばん楽です。経験者のブログでは、前の座席と後ろの座席にまたがるように、車の真ん中あたりに置くやり方が紹介されています。シフトレバーやブレーキなど、運転の操作をじゃましない置き方にするのが大前提です。
気をつけたいのは暑さです。弓具店は、弓は熱に弱く、夏の車の中や倉庫に置きっぱなしにすると曲がって使えなくなると注意しています。道場に着いたら、弓は車から降ろしておきましょう。
飛行機・宅配便|事前に問い合わせる
遠征や引っ越しで、飛行機や宅配便を使うこともあると思います。どちらも、2mを超える荷物を受け付けるかどうか、どんな扱いになるかは会社によって違い、変わることもあります。飛行機は手荷物として預けることになるので、予約した航空会社に事前に問い合わせておきましょう。宅配便も、送る前に運送会社に受け付けの可否と料金を確認してください。
弓道部で弓を運ぶとき
まずは部の決まりに従う
弓道部では、弓を学校に置いておくか、家に持ち帰るか、大会のときにどう運ぶかを、部ごとに決めていることが多いようです。自分の弓を持つようになったら、まずは顧問の先生や先輩にやり方を聞いてください。部活の1年の流れは弓道部とはにまとめています。
学生弓道連盟の「お願い」から分かること
全日本学生弓道連盟は、2020年1月に加盟校あてに「弓具の持ち運びに関するお願い」を出しています。公共交通機関で弓を持って移動する人と、ほかの利用者とのトラブルが起きていたためで、具体的には次のような点を挙げています。
- 弓具はなるべく何張りか束ねて、少ない人数でまとめて運ぶ
- 弓具で席取りをしない
- 駅前など公共の場所で集まるときは、ほかの人の迷惑にならないようにする
- 袴姿や弓具を持って移動すると、周りの人が不安に感じることもあるので、節度ある行動を心がける
大学生向けの通知ですが、高校の部活でも、大人の個人でも、そのまま当てはまる内容だと思います。通知では、多くの交通機関で弓を持って乗れているのは周りの人の理解と配慮があってのことで、事故が起きれば持ち込みを断られることも考えられる、とも書かれていました。
保護者が用意するもの
お子さんが自分の弓を買うときは、弓に付いてくる袋のほかに、石突と、必要なら外袋や雨袋を一緒に用意します。部によっては色や名前の入れ方をそろえていることもあるので、買う前に先輩か顧問の先生に聞いておくと安心です。部でまとめて運ぶための、5張用・10張用の大きな弓袋も売られています。道具全体の費用は弓道にかかる費用をどうぞ。
矢・ゆがけ・弓道着も一緒に運ぶには
稽古に行くときは、弓のほかに矢・ゆがけ(弽・かけ)・弦・弓道着も持っていきます。荷物を減らすコツは、長いもの(弓と矢)は1本にまとめ、ほかはカバン1つに入れることです。
矢は矢筒に入れて、弓に結びつける
矢はむき出しで持たず、必ず矢筒に入れます。転んだときに自分や周りの人を刺さないためです。矢筒には弓に結びつける紐やマジックテープが付いたものが多く、弓と一緒に1本にまとめて持てます。矢筒の長さや太さの選び方は弓道の矢筒の選び方にまとめています。
ゆがけはかけ袋に、替えの弦は弦巻に
ゆがけは革製で湿気に弱いので、かけ袋(ふくさ)に包んでカバンに入れます(ゆがけの付け方と手入れ)。替えの弦は弦巻に巻いて持ち歩きます(弦巻の選び方と使い方)。
弓道着は風呂敷で包むとまとまる
弓道着は、たたんだ袴の上に上衣・帯・足袋を重ねて、大きめの風呂敷で包むとコンパクトになります。わたしも抜刀のころからの道着を、上衣・袴・帯まとめて風呂敷に包んで持っていっています。たたみ方は弓道着・袴のたたみ方と洗濯をどうぞ。
弓の保管|家に置くときの注意

運び方と同じくらい大事なのが、家に置いておくときの扱いです。グラス弓・カーボン弓と竹弓では注意が少し違います。
| グラス弓・カーボン弓 | 竹弓 | |
|---|---|---|
| 弦 | 使わないときは外す | 弓の状態によって張っておくこともある。買った店の指示に従う |
| 置き場所 | 暑くならない場所。夏の車内・倉庫は避ける | 同じ。湿度や気温の変化にも気をつける |
| 手入れ | 特別な手入れはほぼ要らない | 形の変化に気を配る。気になったら弓具店へ |
使わないときは弦を外す
弓具店の取り扱いの注意では、グラス弓・カーボン弓は使わないときは弦を外すとされています。張りっぱなしだと、温度の変化や弦の傷みで急に切れることもあるそうで、近くに人がいれば弓が当たるおそれもあります。新しい弓の弦は結び目が締まって伸びやすいので、張ったときに弓と弦の間の高さが変わっていないかも見ておくとよいそうです。弦の扱いは弓道の弦の種類とおすすめで整理しています。
暑い場所・夏の車内に置かない
運ぶときと同じで、弓は熱に弱い道具です。直射日光の当たる窓際や、夏に高温になる車内・倉庫は避けて、部屋の中の涼しい場所に置きます。
竹弓は買った店の指示に従う
竹弓は自然の素材なので、湿度や気温で状態が少しずつ変わります。弓具店によると、特に新しい竹弓は弦を外したままにすると元の形に戻ろうとして反りが大きくなるため、必要なときは弦を張っておくなどの気づかいが要るそうです。竹弓の置き方は弓ごとに違うので、買った店で聞いておくのが確実です。
置き方|袋に入れて、倒れない場所に立てる
家では、弓袋に入れたまま、倒れない場所に立てておくのが扱いやすいです。立てかけた弓が倒れると、弓も傷みますし、近くの人に当たることもあります。道場には弓を立てて並べる「弓立て」があり、家庭用に買う人もいるようですが、まずは壁の角など倒れにくい場所で十分だと思います。
弓の持ち運び・保管のよくある質問
Q. 弓を持って電車に乗っても大丈夫?
JR東日本では、袋に入れて車内で立てて持てるスポーツ用品なら、長さが2mを超えても持ち込めるとしています。ただし、2mを超える荷物は持ち込めないと案内している会社もあり、混雑時は断られることもあります。乗る路線の案内を確かめ、混む時間を避けて、ドアの近くで縦に持つのが基本です。
Q. 弓を持ち歩くと銃刀法に引っかかる?
引っかかりません。銃刀法で原則として所持が禁じられているのは銃砲・刀剣類とクロスボウで、手で弦を引いて放つ和弓は当たりません。くわしくは和弓とはのよくある質問に書いています。
Q. 弓袋は何張用を買えばいい?
自分の弓1張を運ぶなら、1張用で足ります。5張用・10張用は、部活などで何張りもまとめて運ぶためのものです。買うときは、自分の弓の長さ(並寸・伸寸)が入るかを確かめてください。
Q. 弓を道場に置いておける?
道場や所属先の決まりによります。置かせてもらえるところもあるようですが、許可が要るので、所属している会や先生に相談してください。
Q. 弓を短くして運ぶ方法はある?
いま弓具店でふつうに売られている弓道の弓は一本ものなので、折りたたんだり分けたりはできません。2mを超える長さのまま運ぶ前提で、包み方と乗り物を考えておきましょう。
まとめ|包んで、縦に持って、乗る前に確かめる
弓の持ち運びは、弦を外して袋と弓巻で包み、石突を付けて、縦に持つことが基本です。電車はJR東日本なら袋に入れて立てて持てば乗れますが、2mを超える荷物を断っている会社もあるので、乗る路線の案内と混雑には気をつけたいところ。自転車はやめておき、車では暑さに注意します。家では弦を外して、涼しい場所に立てておきましょう。
自分の弓を持つ日が来たら、わたしも雨袋を1枚カバンに入れて、混む時間を外して通おうと思います。弓や道具の選び方は、次の記事にまとめています。

