弓道のルール|的までの距離28m・的の大きさ・勝ち負けの決め方

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子どもの弓道の大会を見に行ったけれど、静かに矢が飛んでいくだけで、何を競っているのかよく分からなかった。

これから入部・入門するので、ルールくらいは先に知っておきたい。そんな人に向けて書きました。

先に結論です。弓道の試合は、28m先にある直径36cmの的に決められた本数を射て、当たった本数を競うのが基本です。的のどこに当たっても1本は1本。中心に近いほど点が高くなるのは、60m先の大きな的を射る「遠的(えんてき)」の得点制のときです。

わたしは(執筆時)的前に立ち始めたばかりで、試合に出たことはまだありません。そのぶん、試合を見る側・これから始める側がつまずくところは分かるつもりです。細かい運用は大会ごとに要項で決まるので、出場するときは要項もあわせて確認してください。

この記事は、全日本弓道連盟(全弓連)の「弓道競技規則」(令和7年5月改定)と、高校の大会の実施要項を読んで整理したものです。

この記事でわかること
  • 近的28m・遠的60mの違いと、的の大きさ・種類・高さ
  • どこに当たれば「当たり」になるのか(判定の決まり)
  • 的中制・得点制・採点制と、同じ本数のときの決め方
  • 高校の大会のルールと、道場で守る安全の決まり
目次

弓道のルールの基本|近的と遠的の2種目

弓道の試合のルールは、全弓連が定める「弓道競技規則」にまとまっています。全弓連や各地の連盟が開く大会はこの規則で行われ、大会ごとの細かい決まり(射る本数・決勝の方法など)は、それぞれの実施要項で決めます。

試合は「近的」と「遠的」の2種類

競技は近的(きんてき)と遠的(えんてき)の2種目です。ふだんの稽古も、高校・大学の大会の多くも近的。遠的は専用の射場が要るので、遠的の大会や、国民スポーツ大会などで行われます。

近的遠的
射距離28m60m
的の大きさ直径36cm(大会により24cm)直径100cm(79cm・50cmの霞的もある)
的の中心の高さ垜(あづち)の地面から27cm射場の床から97cm
的の傾き後ろへ5度後ろへ15度
射ち方坐射が原則(難しい場合は立射)立射
主な勝ち負けの決め方的中制(当たった本数)得点制(中心ほど高得点)、または的中制
近的と遠的の違い(2026年10月時点の競技規則)

数字で見ると、近的は「近い・小さい」、遠的は「遠い・大きい」と覚えておけば十分です。

28m先の36cmは、数字で見るよりずっと小さな的ですよ。わたしも的前に立ち始めて、まったく当たらないことにまず驚きました。手の角度のわずかなズレが、的に届くころには大きなズレになるんですよね。

的中制・得点制・採点制の3つの方式

勝ち負けの決め方は、規則では3つの方式が決められています。

  • 的中制:当たった本数で順位を決める。近的の大会はほとんどがこれ
  • 得点制:的の中心に近いほど高い点数をつける。遠的で使う方式
  • 採点制:審判が、射の形や品格、体配(入場から退場までの動作)、的中などを総合して点数をつける

アーチェリーのように「真ん中なら10点」という数え方は、弓道では遠的の得点制だけです。近的では、的の端に当たっても中心に当たっても同じ1本。そのぶん、1本1本の重みがはっきりしています。アーチェリーとの違いをまとめて知りたい人は弓道とアーチェリーの違い|難しさ・費用・始め方まで比較もどうぞ。

個人戦と団体戦

試合には個人戦と団体戦があります。団体は規則上3人以上で組み、実際には3人か5人のチームが多いです。団体戦は、チーム全員が射た矢のうち当たった本数の合計で競います。

的までの距離|近的28m・遠的60mはどこからどこまで?

「弓道 何メートル」と調べると28mという数字がすぐ出てきますが、どこから測った28mなのかまで書いてあるページは意外と少ないです。

近的28mは「射位」から的まで

28mは、矢を射るときに立つ(座る)位置である射位(しい)から、的までの距離です。規則では、的から直角にのばした28mの位置から射ることになっていて、それ以外の場所から射てはいけません。どこの道場でもこの距離は同じなので、ふだんの稽古と試合で距離感が変わることはありません。

試合では、射位の少し後ろに本座(ほんざ)という待機の位置があり、本座から射位までは約2m(三歩ほど)が標準です。試合を見ていると、選手がいったん後ろに並んでから順に前へ出ていきますが、その後ろの位置が本座です。

遠的は60m

遠的の射距離は60mです。近的の2倍以上の距離なので、的も直径1mと大きくなり、矢は弧を描くように飛んでいきます。遠的は立って射る立射で行います。

なお、28mや60mの距離感は、図で見たほうがつかみやすいと思います。

近的と遠的の違い。近的は射距離28m・直径36cmの的、遠的は射距離60m・直径100cmの的

弓道の的|大きさ・種類・高さ

近的の的は直径36cm。霞的と星的

近的で使う的は、直径36cmです。昔の寸法で一尺二寸にあたるので、「尺二(しゃくに)」と呼ぶこともあります。種類は2つあります。

  • 霞的(かすみまと):白と黒の輪が重なった的。道場の写真でよく見るのはこちら
  • 星的(ほしまと):白い的の中心に、直径の3分の1の黒い円(星)がある的

近的の的中制では、霞的でも星的でも「枠の中に当たれば1本」なので、白い部分か黒い部分かは関係ありません。大会によっては、決勝の射詰(いづめ)などで直径24cmの小さな星的を使うことがあります。

弓道の的の種類。近的の霞的と星的(直径36cm)、遠的の得点的(直径100cm、中心から金10点・赤9点・青7点・黒5点・白3点)

的の高さと角度

的の置き方も規則で決まっています。近的の的は、矢を受け止める土の山である垜(あづち)の前に置き、的の中心が地面から27cmの高さになるようにします。さらに、的の面を後ろへ5度傾けます。

27cmというと、思ったより低いと感じる人が多いのではないでしょうか。地面すれすれに置かれた的に向かって、28m先から矢を放つわけです。遠的の的は中心が床から97cm、傾きは15度と、どちらも近的より大きくなっています。

遠的の的は直径1m。得点的の点数

遠的では直径100cmの的を使います。的中制なら霞的(100cmのほか、79cm・50cmもある)、得点制なら得点的です。得点的は中心から色分けされていて、点数は次のとおりです。

色(中心から)点数
金(黄)10点
赤9点
青7点
黒5点
白3点
遠的の得点的の点数(直径100cm)

アーチェリーの的と違って、外側でも0点にはならず白で3点。矢が的を突き抜けたときは7点、と決まっているのも弓道らしいところです。

的のほかに、どんな道具をそろえるのかは弓道の道具一覧にまとめています。

どこに当たれば「当たり」?的中の判定

観戦していていちばん分かりにくいのが、ここだと思います。規則の基準は一つで、矢が的を射抜いて、的枠の内側にとどまっていれば「当たり」です。矢が折れたときは、矢じりの側の部分がどこにあるかで判断します。

ややこしいのは、的の縁ぎりぎりのときや、矢が跳ね返ったときです。規則に書かれている主なケースを表にしました。

矢の状態判定
的の面を射抜いて、枠の内側にとどまった当たり
枠の内側から入り、枠の外側へ突き抜けた当たり
的枠の継ぎ目や枠そのものに刺さって止まった当たり
当たっている矢に刺さった(継ぎ矢)当たり
的が倒れたが、矢は枠の内側にとどまっている当たり
枠の外側から入って、内側に出た外れ
当たったが跳ね返って、枠の外に出た外れ
手前の地面を擦ってから的に入った(掃きあたり)外れ
的を立てる串と枠の間に挟まった外れ
幕や網などの障害物に触れてから的に入った外れ
近的の的中の判定(主なもの)

試合では、的の近くにいる審判が判定し、当たりは「○」、外れは「×」で示します。記録も○×で付けるので、得点板や記録用紙に「○○×○」と並んでいたら、4本中3本当たった、という意味です。

的に当たると、乾いたいい音がします。外し続けたあとに一本きれいに入ったときのあの音が、続ける理由になっている人は多いと思います。わたしもその一人です。

勝ち負けの決め方と試合の流れ

霞的に矢が刺さっている様子

1人何本射る?

弓道では、矢を2本ひと組で持ち、これを一手(ひとて)と呼びます。試合では、一手を2回で1人4本(四つ矢)を1回分として射ることが多く、これを何回か繰り返して合計の的中数で競います。何本射るかは大会の要項しだいで、予選は4本、上位に残ると追加で射る、という形もよくあります。

同じ的中数のときは「射詰」と「遠近競射」

個人戦で的中数が並んだときは、まず射詰(いづめ)で決めます。1本ずつ射て、外した人から抜けていく方式です。当て続けた人ほど上位になります。

射詰で外した人どうしの順位は、遠近競射(えんきんきょうしゃ)で決めます。1人1本ずつ射て、的の中心に近い矢から上位にする方式です。地面を擦って届いた矢(掃き矢)は下位になります。

団体戦で並んだときは、チームの全員が1本ずつ射て、当たった本数の多いチームを上位にします。決まらなければ、決まるまで繰り返します。

制限時間と「無効」「失権」「失格」

団体戦では、行射の制限時間を決めることができます。制限時間の30秒前に予鈴、時間になると本鈴が鳴り、本鈴のあとに射た矢は無効です。時間の長さは大会と人数・射数で変わり、高校の県大会の要項では、5人のチームで1チーム6分30秒〜7分ほどの例がありました。

反則にあたるものは、重さによって3段階に分かれています。

区分どうなるか主な例
無効その1本が数えられない前の人より先に射た/打起しのあとで射直した/矢をつがえたあと筈が弦から外れた/本鈴のあとに射た
失権それ以降の行射の権利を失う制限時間を過ぎても射続けた/射場での助言・妨害などの禁止事項/的中の判定に従わない
失格その大会の資格を失う申込の資格不備や虚偽/大会の品位を損なう言動/故意の妨害
無効・失権・失格の主な例

試合中に弦が切れたり矢の筈が割れたりしたときは、替えの弦・矢に取り替えることが認められています。部活で「替え弦を持っていきなさい」と言われるのはこのためです。

服装と道具の決まり

服装は、弓道衣(筒袖の上衣・袴・白足袋)か和服です。全国規模の大会の一部では、白い筒袖に黒い袴、と色まで指定されます。弓道着のそろえ方は弓道着の選び方にまとめています。

道具にも決まりがあります。弓は日本の弓(和弓)で、長さは221cmが標準。矢の羽根は鳥の羽根3枚。ゆがけ(弽・かけ)は鹿革で、行射のときは必ず右手に着けます。弓や矢の色・柄は、伝統的で派手でないものが望ましいとされています。

高校・中学の大会のルール

高校の大会は、全国高等学校体育連盟(高体連)の弓道競技規則と、大会ごとの実施要項で行われます。中身の土台は全弓連の規則と同じで、的は36cmの霞的、的中制です。

目に見えていちばん違うのは、高校の大会では、座らずに立って射る「立射」が多いことです。決勝だけ坐射にする大会もあります。団体は5人のチームで、1人4本ずつ射る形が多く見られます。インターハイや県総体の団体は5人、全国選抜大会は3人です。

服装も要項で細かく決まっていることが多く、袴の色を学校で統一する、はちまきは無地、装身具は着けない、といった決まりが並びます。部活の全体像や費用は弓道部とはを、インターハイの流れは弓道のインターハイ・高校総体を見てください。

中学校の大会は、都道府県ごとの中学校体育連盟や弓道連盟が開いていて、形式は地域によって違います。

試合以外で守るルール|道場の安全とマナー

「弓道のルール」で調べると、道場での決まりごとが気になっている人も多いようです。弓矢は扱いを間違えると危ない道具なので、どの道場にも安全の決まりがあります。公営・学校の弓道場の注意事項によく書かれているのは、次のようなことです。

  • 人に向けて弓を引かない。矢をつがえるのは射場と巻藁の前だけ
  • 矢を取りに的の前へ行くときは、声をかけて、射ている人がいないことを確かめてから入る
  • 巻藁を使うときは、まわりに人がいないか確かめる
  • 道場には土足でも裸足でも上がらない

このほかに、入場から退場までの歩き方・座り方・礼の仕方は体配(たいはい)として決まっています。こちらは安全というより作法の話で、審査でも的中とあわせて見られます。詳しくは弓道の体配とはに、審査で何を見られるかは弓道の審査とはにまとめています。

試合の規則を読んでいて感じたのは、当たり外れと同じくらい、礼や所作が大事にされているということです。以前通っていた抜刀の教室でも、刀を振る前後の礼や立ち居振る舞いは付け足しではなく、稽古そのものでした。弓道もそこは同じだと感じています。

弓道のルールでよくある質問

Q. 的中率はどうやって計算しますか?

当たった本数を、射た本数で割ります。20本射て12本当たったら、12÷20で6割(60%)です。稽古でも○×で記録を付けておくと、調子の波が見えるようになります。的中を上げるための狙いの考え方は弓道の狙いの付け方|矢が前・後ろ・上下にずれるときの見直し方にまとめています。

Q. 審査(段位)のときも、試合と同じルールですか?

違います。審査は勝ち負けを決める場ではなく、射の形や体配、的中などを見て、その段位にふさわしいかを判断する場です。射る本数や見られる点も試合とは別に決まっています。弓道の段位一覧と弓道の審査とはを見てください。

Q. 近的でも点数制の試合はありますか?

近的の規則には、遠的のような中心ほど高得点になる得点制の決まりはありません。近的で点数をつけるのは、射の内容を審判が採点する採点制のほうです。

Q. 左利きでも、ゆがけは右手ですか?

規則では、行射のときは必ず右手にゆがけを着けることになっています。左利きの人も右手で弦を引くのが基本です。くわしくは左利きでも弓道はできる?にまとめています。

まとめ|ルールを知ると、一本の重みが見えてくる

弓道の基本のルールは、28m先の直径36cmの的に、決められた本数を射て、当たった本数を競うこと。遠的は60m先の直径1mの的で、得点制なら中心ほど点が高くなります。当たりかどうかは「矢が的枠の内側にとどまっているか」で決まり、同じ本数で並んだら射詰と遠近競射で決めます。

どこに当たっても1本は1本。だからこそ、外したあとの1本、射詰の1本に、見ている側まで息をのみます。ルールが分かると、静かに見えた試合の見え方がかなり変わるはずです。

弓道そのものの全体像は弓道とは?読み方・ルール・魅力を初心者向けに解説に、射るときの動きの順番は射法八節とはにまとめています。自分でもやってみたくなったら、大人から弓道を始めるにはや弓道体験ができる場所から読んでみてください。

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この記事を書いた人

大人になってから弓道を始めた初心者です。以前は抜刀の教室に通っていました。道具の選び方も作法も、はじめは何もわからず調べる毎日。同じところでつまずく人のために、調べてわかったことを一つずつ整理しています。

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